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白百合、黒鷲と仲直りをする


「カミーユ様、仕事をして下さい」



ノエルが冷たく言い放ったその言葉が胸に刺さる。


「だって~~…。私の黒鷲さんは恥ずかしがり屋過ぎないかい?」


「左様で御座いますね。はい、此方にサインを」


「ちょっと、面倒くさそうにしないでよ」


「その様に仰るのでしたら、私めにはどうぞお話し下さいますな」


「ノエルにしか話せない」


「…知っております。めんどくせぇ」


「わ、本性出た」



ノエルと軽口を叩いてはいるが、少々落ち込んでいる。


昨日、距離感を測り間違え抱き締めると

シルヴィは私を投げ飛ばし、床に叩き付けて逃げる様に自分の部屋に入ろうとしていた。



痛い事は嫌いなので受身だけは誰にも負けない自信が有る私は、咄嗟の事にも自分の身を守っていた。何とも情けない理由だ。


そして逃げたシルヴィを追い、部屋が閉まらぬ様に寸での所で足を滑り込ませたのだ。


とても、痛かった。


謝ったが、それ以上言葉が出て来なくて直ぐに部屋を出てしまった。

シルヴィはやはり、それから部屋に篭ってしまった。

会えるかと少し期待をしたが、寝室にも来てはくれなかった。



抱き締めた事に後悔はしていない。


祖父に会いたいと言ってくれた事が何とも嬉しかったのだ。



少しだけ私の方が小さいので、立っている状態で抱き締めても抱き着いているようにしか見えないがな。

伸びなかった身長も悔やまれる。



意識して貰おうと、気が急いてしまっているのか?

いや、自然にやってしまった。


近くに居て、日に日に好きになる気持ちを抑えられて居ない。



可愛らしい物が好きな事を知り、喜んでくれる彼女はとても愛らしい。


だが、それを好きだと言えない彼女に疑問も浮かぶ。あんなに似合っているのに。



誰かに似合わないと植え付けられてしまっている気がする。


剣を振るう事は本人が望んだ事らしいが

男らしく振る舞い、自分を抑えている事は本来しなくても良い事。

剣の道を志し、可愛らしい物が好きなまま女性らしく居る事も出来るはずだ。


私は、少々勘が鋭い。


大体予想している事は当たるのだが、確認は大事だ。

そのお陰と言ってはなんだが、彼女と夫婦になる事が出来たので細部の情報は必要は無かったが

少し、調べさせてみるか。



そう考えていると、ノエルが先程サインをした書類を持ち一度退出すると言って扉を開けた。



すると、ノックをしようとしていたシルヴィが驚いたような顔をしてそこに居た。



「これは、これは…シルヴィア様、良い所へ。カミーユ様が使い物になりません。どうぞ、早々に仲直りをお願い致します」


ノエルは強制的にシルヴィを部屋に入れると部屋の扉を閉めた。


シルヴィは心構えが済まないまま中に入れられ、戸惑っている。



「シルヴィ、会いに来てくれたの?」


「カミュ…そ、その………逃げて悪かった…」



シルヴィは顔を赤くして俯きながら、私に謝る。



「シルヴィは悪くないよ。嫌だったら、そう言ってね」



シルヴィが愛らしい事に、又もや抱き締めたくなったが逃げられたばかり。ここは我慢時である。



「い!…………」



「ん?聞こえないよ、もう一度言って?」



聞き耳を立てたが、もごもごと言い辛そうにしていて全く聞こえない。


「………じゃ…ぃ……」


「え?ごめん、もう一度」






「嫌じゃ無いんだ!!」



悪いと思ったが本当に聞こえなかったので、聞き直すとシルヴィが全身まで真っ赤にしながら叫んだ。


予想外の事に理解に時間が掛かり、目をぱちぱちとさせてしまった。




「し、しかし…私はこういう事に慣れていない。夫婦になったとはいえ、私を待ってくれている事にも感謝はしている。


貴方を……その、男性として好きになりたい。


だが、気持ちが付いていかないのだ。

少しずつ……お願いしたい」




ゴッ




「だ、だ、だ、大丈夫か!?」


「あぁ、ごめんね。愛おしさが振り切ってしまったので冷静になろうと思ってね」


「そ、そうか」


「シルヴィ、手加減はするけど嫌だと言ってももう遅いよ?」


「…分かっている。…手加減を頼む」



冷静になろうと机に頭をぶつけたが、これではそこら辺を破壊しそうだ。

本当に破壊出来るかは置いておこう。



シルヴィが可愛過ぎる。



私はツカツカとシルヴィの前まで歩いた。

ビクッと震えた彼女の肩を優しく掴む。



「シルヴィ、抱き締めても良い?」



「………あぁ」



顔を赤くしたままの彼女を出来るだけ優しく抱き締める。


お互いの心臓の音が聞こえそうだ。


身を硬くしたままの彼女の背中を緩やかに撫でる。


時間は掛かるかもしれないが、大きな一歩がこんなにも早く来るなんて嬉しい限りだ。



「シルヴィ、大好きだよ」



そう耳元に呟くと、彼女は耳を抑えてバッと離れてしまう。



「~~ーー!!!!て、手加減してって言ったのに!!」



人によってはキツいと感じる目元を潤ませて震える彼女は、再び逃げて行ってしまった。





私は又、悶絶する羽目になった。



そして、今日も一人の夜を迎えたのだった。



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