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辺境の白百合と帝国の黒鷲

【あらすじ、お話し→お話】キィィンーーーーー




「勝負有り!三番隊の勝利!」


一本の模擬刀が弧を描き地面に突き刺さる時、勝敗が決まった



鮮やかな勝利

差は歴然としていた

力だけでは相手に分があった、しかし技術が圧倒的である


先程まで相手の喉元に突き立てていた模擬刀を掲げると、一気に歓声が湧き上がる


ギラギラと翡翠色の瞳が鋭く光り、空の蒼に一滴落ちた墨のように

一つに纏められながらも風に靡く呂色の長髪がやけに眩しい

鍛え上げられた逞しい体躯、それは艶めかしくも感じられ胸の鼓動が収まらない


これが、帝国の黒鷲ーーー



「何て…美しいんだ」






それが第一印象だった







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




「私と結婚して下さい!!!」




「………はい???」





ヴィタメートル帝国三番隊隊長。

シルヴィア=メルフィン


それが私の懸想相手


王宮におけるパーティーにて

存在を見付けた瞬間、想いが溢れてしまって




つい、二年想い続けた"彼女"にプロポーズをしていた。



「アルディアン辺境伯では無いですか…とりあえず場所を変えましょう」


はっ、と気付いた時には物凄く注目を浴びてしまっていた。





「失礼…、お手を」


「…。」


怪訝な顔をされながらも、エスコートを許された

彼女は軍服であるので傍から見れば物凄くあべこべだが、私は真剣なので何も思っていない。


休憩用の部屋まで案内し、少し扉を開けておく。


「先程は大変失礼を致しました。

辺境で伯爵をしております、カミーユ=アルディアンと申します」


「名乗り遅れました。

メルフィン伯爵が娘、シルヴィアです。

先程のお言葉ですが…仲間内のご冗談にしては少々目立ち過ぎかと…」



話す声まで凛々しい彼女は正真正銘、女性である。

女性にして隊の隊長を勤める唯一。

私の心の乙女がキャーキャー言っている。



「いえ、至って真剣です。

遊戯も賭けも致しておりません」


「…では、何故?」


「貴女の事をお慕いしております。

私と添い遂げて頂きたいのです」


「…お話ししたのは、これが初めてでは?」


「えぇ、お話ししたのはこれが初めてです。

一方的ですが貴女の事を存じておりました。

私は貴女が良いのです」


「何故かお聞きしても?」


「私は見ての通り、この様な容姿で…

貴女を初めて見た時に何て凛々しく、強く美しい方だろうか、と思いました。

無いものねだり…と言ってしまえばそうかもしれません。

二年、自分が伯爵を継ぐまでこの想いはしまっておりました…。それが今、解放されたのです。


領主としても、心も身体も強い伴侶が欲しいのです。

軍人のメルフィン嬢にとっても

辺境の砦を守る私との婚姻は正直、好物件だと思われますよ」


私、カミーユはとても色素が薄い。

プラチナブロンドの髪、薄い琥珀色の瞳を持つ

令嬢方が噂で【辺境の白百合】等と言っている事を知っている。


私は、男だ。


白百合とは普通女性が比喩されるものでは無いのか、誠に遺憾である。



また、腕っ節に全く自信は無いが頭脳のみで父の跡を継ぎ辺境伯になったところだ。

筋肉を付けるためにあれこれしたが、どうにもならなかった。




「なるほど…。

ですが私は、今年22になるのです。

行き遅れで宜しければ、このお話しはとても有難い。

実は…どんなに武勲を得られようとも

女で有る為に、軍人としての寿命は短い。


早く良き相手を見つけ、婚姻せよと両親からの無言の圧も、陛下からの圧も年々酷くなる一方でして…ほとほと疲れていた所なのです」


「なんと!それは、良いお返事という事で宜しいのですか?」


「えぇ、私は親元を離れる事が出来るなら好都合です。

それに、私にはこの様なお話しを出して頂けること自体有りませんので

お断りすれば、一生独り身です。」


「では、善は急げと申します。御両親にご挨拶をさせて頂きたい」


「本日出席しております。こちらへ」



夢では無いだろうか

勢いだけの告白を受けて頂けたのだ

夢で有ろうと、無かろうとこんな機会逃す訳にはいかない。


軍人らしい足早な彼女の後を追う




「シルヴィア戻ったか!驚いたぞ、大丈夫かっ?」


「シルヴィア…どういう事なの?説明して?」


「父上、母上大丈夫です。こちら先程のカミーユ=アルディアン伯です」


「ご紹介に預かりました。

お義父様、お義母様

カミーユ=アルディアンと申します。

お嬢様との婚姻をお許し頂きたく参りました」


「お、お義父っ!?ゴホンっ……

マルコス=メルフィンと申します。

ですが、アルディアン伯…。

確認なのですがうちの娘で宜しいのですか?少々やんちゃ者でして…」



軍人にまでなった令嬢に『少々やんちゃ』は違う気がするが、気にせず続ける。


「はい。ずっとお慕いしておりました。

お嬢様で無くてはいけないのです」


「なんと…」


「まぁ…良かったじゃない。まさかあのアルディアン辺境伯様からの婚姻願いだなんて…」


「そ、それもそうだな。

私共に異論は御座いません、どうぞうちの娘を宜しくお願いします」


「では、本日中に婚姻を結び

式は一年後。

我が邸には、いつでも来て頂けますがどうなさいますか?」



我ながら気持ち悪いくらいに用意周到だ。


「では、諸々の処理が有りますので一週間後にそちらに向かいます。

なので、三週間程お待ち下さい」


「畏まりました。帝都の邸にてお待ちしておりますので一週間後の処理が終わりましたら、お迎えにあがります」



「…お待ちしております」




やはり気持ち悪いだろうか?

少々、引かれている気がする。



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