プロローグ
初めまして!物語を書いてみたくなったので書いてみるよ!
――扉があった
もう、どれだけ歩いたか分からない
ずっと佇んでいたのかも知れない
振り返ってみても、何もない
分からない
私が―俺が―自分は誰なのだろう
何も分からない
それでも、私は―俺は―、それを扉だと思った
だから、それに手をかける
――開くのか?
何かがそう尋ねた気がした
――その中に、望む物があるとは限らない
扉を手前に開く 白い光が見えた
――そう、好きにすると良い
温かい光が包み込む
――旅路の果てに、幸多からんことを
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漂う。漂う。ユラユラと。暗闇は何処までも深く、光はない。
かつて自分は何かだった。何となくそれは覚えてる。でも、今はただ、暗闇の中で漂う。もしかしたら、暗闇が自分なのかも知れない。
果ての無い時間が流れた様な、何一つ時間が流れていない様な気がする。何もかも、溶けてしまう様で、崩れてしまう様で、あぁ、だから、自分は何でもないんだな。
そのまま眠って、溶けて消えようとしていたら、突然、ピリッと刺激が走った。
ビックリして起きると、突然、世界に光が舞い込む。チカチカとして目映い。何が起こったのだろう。
「うん~?あっれぇ?これで上手くいくと思ったんだけどなぁ…」
気がつけば、大きな赤い目がこちらを覗き込んでいた。
「ねぇ?ボクの声聞こえないかな?もしも~し?」
コンコンと叩く音が聞こえる。どうやら自分は何かの中にいるらしい。辺りを確認しようと力を入れてみるけど、上手く体が動かない。
「あ!動いた?動いたよ、キミ! ねぇ、お話しできる?」
見上げれば、自分を覗き込んでいるのは、赤い目に黒い髪の、そう、たぶん、人間だと思った。とても大きな人間の、たぶん、女性だ。
『………ココ………ハ?』
色々と気力を尽くすと、何とか声を出すことができた。
「………す、すごい!本当におしゃべりできる!大成功!」
わーい、わーいと巨人の女性はピョンピョンと跳ね回る。ズシンズシンと響くのでやめてもらいたい。
「あっと、ゴメンね。ボクはノレル。アルカビンネル高地に一人で住んでる魔女さ。」
魔女。ノレルと名乗った女性は、そう言った。
「そして、キミは、ボクが作った人工精霊なんだよ。キミの名前はあるかな?」
なんと、私…俺?は人工精霊でありますか。………人工精霊って何でしょう?
そもそも、自分の性別どっちでしたっけ。分からない。名前以前に、自分が何だかも良く分からない。ノレルは自分のことをボクと言っているし、ボクもボクのことはボクで良いのかも知れない。
よくよく周り見たら、ボクを囲っているのはガラスで、フラスコの様な物だと思った。
フラスコの中の人工精霊………ホムンクルスという単語が浮かんだが、それが何なのか良く思い出せない。
「生まれたばかりだもん、名前はないよね。じゃぁ、ボクが付けないとね………」
沈黙しているとノレルは自分に付ける名前を考えて、ウンウンとうなり始めた。時折ポチとかタマとか聞こえるけど、流石にやめて欲しいね。
「キミは尾っぽが二股に分かれてるよね…。尾割れ……尾割り………オワリ………うん、キミは人工精霊オワリ。ねぇ、どう?」
これがボク、オワリとノエルの物語の始まりだった。