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アメジストの軌跡  作者: JEDI_tkms1984
新たなる脅威篇
62/119

3 急襲!-3-

「………………」

 爆音が鳴り止み、黒煙が大気に溶けて消える。

「他には――」

 なさそうですね、と従者は安堵する。


「はい…………」 

 シェイドは落魄らくはくした様子で返した。

「おそらく積み荷を狙った賊の類でしょう。ここに留まる理由はありません。すぐに避難所に向かいましょう」

 とはいうが、一台は大破して使い物にならない。

 前の車両には二台分の物資と人員を収容できるスペースはない。


「艇を呼びましょう。この辺りなら着陸できる場所もありそうです。荷物はそれに――」

「いや、待て! それは駄目だ」

 声を荒らげたのは分乗するよう提案した従者だ。

「敵の正体も規模も分かっていない。その通信も傍受される恐れがある。我々にトラブルが起きたと気付かれればまた狙わるぞ」

 早口でまくし立てて彼はシェイドに向きなおった。


「まずは皇帝だけでも目的の避難所に車で向かわれ、そこで新たに調達した車両をこちらに寄越していただく……これが最良かと」

「その間、他の人はどうするんですか?」

「ここでお待ちします。もし物資を全てあれに積み込めるなら歩いて避難所に向かいましょう。そうすれば合流地点が近くなります」

 最善策であることを彼は念押しした。

 が、シェイドはすぐには首を縦に振らない。

 やはり皆を置いていくことに抵抗があるようだった。


「ええ、っと……」

 彼は困ったようにフェルノーラを見た。

 彼女は特段の反応を示さず、黙って見返している。

”決めるのはあなたよ”

 その目はそう言っているようだった。

「アタシは賛成できないね」

 見かねた様子でライネが言った。

「さっきのはシェイド君……じゃなかった、シェイド様を狙ってたんだと思う。先に行かせたりしたら”狙ってください”って言ってるようなもんじゃん」


「僕は別に――」

 自分が襲われるのはかまわない、と言いかけたところに、

「運転できないだろ?」

 彼女はすぐさま釘を刺した。

 同乗者を危険に巻き込む可能性があることに気付かされ、シェイドは項垂れた。

「そう考えりゃ他の誰かが応援を呼びに行ったほうがいいと思う」

 もっともだ、という声があがる。

 この意見に難色を示した従者はひとりだけだった。


「ライネさんに賛成の人は……?」

 問いにほぼ全員が挙手した。

 賛同しなかったのはフェルノーラと、シェイドを先行させることを提案した従者のみだ。

「――分かりました」

 過半が賛成しているならそれに従おうと彼は決めた。

「それで誰にお願いしましょう?」

「私が――」

 先ほど手を挙げなかった従者が進み出る。


「私が言い出したことです。ただちに避難所に向かい、車両を調達して参ります」

「あ、はい、それじゃあ……」

 渋々といった様子で任せようとしたシェイドだったが、

「ちょっと待って」

 それまで黙っていたフェルノーラが容喙ようかいした。

「別の人にしたほうがいいと思う」

 冷静に、無感情に彼女はそう提言する。

 なぜ、という彼の問いにフェルノーラは、

「なんとなく。でもそうしたほうがいいと思う」

 と言を重ねてからライネをちらりと見た。

 その視線に彼女は分からない顔をしていたが、

「あ~、アタシもその子に賛成」

 何か意味があるのだろうとフェルノーラに合わせた。


 避難所への先行は従者であれば誰でもよいため、人選に関しては他に意見は出ない。

 だが2人の発言を受けてシェイドはたまたま目が合った別の従者にその役目を頼んだ。

「承知いたしました」

 あくまで護衛が任務であるから、なるべく彼の傍を離れるべきではない。

 従者は道案内のスタッフを帯同し輸送車に乗り込んだ。


「では我々も――」

 追撃に備え、シェイドを守りながらなだらかな丘を登る。

 少し歩いたところに廃棄された採石場があり、応援が来るまでそこに身を隠す手ハズになっていた。

 周囲に視界を遮る物はないため、車両が通りかかればすぐに分かる。


「なんだか懐かしい感じがするわね」

 奥にほのかに光るサイオライトを見つめながらフェルノーラが呟く。

「フェルノーラさんも石集めしてたの?」

「私しかいなかったから」

 母親以外には、という意味だとすぐに悟った彼は反射的に目を逸らした。


「もうちょっと奥に行ったほうがいいんじゃないか?」

 見通しが良すぎて敵に発見される恐れがあるとライネが指摘する。

「ああ、たしかにそうだな」

 入り口を見据えたまま答えた従者たちがシェイドを囲むようにして奥部へ向かおうとする。

 だが彼はかぶりを振った。


「やめたほうがいいです。またさっきみたいな攻撃を受けたら入り口が塞がってしまうかもしれません」

 そう言ってからあの時のことを思い出す。

 地を蠢かす爆撃。

 爆音と青白い光。

 町を焼いた炎。


「………………」

 ここでまた同じことが繰り返されるのでは――。

 シェイドは息苦しさを感じて外に出ようとした。

「どこに行くの?」

 その手をフェルノーラが掴んだ。

 暗がりではっきりとはしないが、彼女の表情は恐怖に引き攣っているようだった。

「ああ、うん……そうだね…………」

 その手を遠慮がちに振りほどき、シェイドは愛想笑いを浮かべた。

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