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第8話 王子と婚約者





リリアンヌ様の春の女神スマイルにメロメロどっきゅん(死語)な私を、フェリクスが上手く誘導して応接間内のソファへ座らせる。


ごめんな、フェリクス。

キミが爆死した直後にこんな幸せ味わってて、ごめんな?

でも、推しの尊い笑顔を向けられたら、仕方ないんだよ。

キミの犠牲は無駄にしないぜ!


そう言えば前世でギリシャ神話を学んだときにアドニスって人は美の女神アフロディーテの恋人として出てきてたな...。

つまり、アドニスの婚約者であるリリアンヌ様は美の女神...?

なにそれ、尊い...!


「あの、アリス様?どうされましたの?」

「気にするな、リリアンヌ嬢。これはちょっと緊張が極限に達しただけだ」

「おや、フェル。キミが人を“これ”なんて表現するのを、僕は初めて聞いたよ?まるでアリス嬢はキミの所有物、と言っているようだね」

「...兄上、ご冗談はおやめください」


ぽやぽやと脳内マイワールドにお出掛けしていると、不意にそんな会話が聞こえてくる。

周りを見渡すと、ソファに腰掛けて私を見る3人。

ちなみにフェリクスと私、アドニスとリリアンヌ様が隣同士で、向かい合った2人掛け用のソファに座っている。


「す、すみません、みなさま!わたしったら、しつれいをいたしました!」


マイワールドから帰還してすぐに謝罪する。


よく考えたら王子と公爵令嬢という自分よりも上の身分の3人を前にトリップしているなんて、失礼過ぎる。


「確かに殿下の前に出ただけで緊張して話せなくなるのでは、困りますわ。わたくし達は王子殿下の伴侶となるのですから、気をつけてくださいね」

「はい...もうしわけありません、リリアンヌさま」


リリアンヌ様に会って数分で注意を受けてしまった事が申し訳ない。

気を引き締めねば。


それにしても、私は王子に会うからではなくてリリアンヌ様にお会いするから緊張したんだが、傍から見れば前者だと思われてしまうのか。


「アリス嬢は素直なんですね」


アドニスがそう言う。


おっと、危ない。

すっかり存在を忘れてしまっていた。

アドニスが居たんだった。


「他者の言を聞き入れられることは、とても大切です。アリス嬢はきっと良い妃殿下になりますね」

「そんな、わたしにはもったいないおことばです。リリアンヌさまのほうがしょさもうつくしくて見ほれてしまいますわ...」


アドニスの言葉を流して、リリアンヌ様に視線を移す。


先程一瞬だけ感じた冷たい空気は、フェリクスの私がリリアンヌ様に憧れているという発言で緩和されている。

きっと、私を見てアドニスに言い寄る不届き者かも知れないと警戒されたんだろう。

アリス、顔だけは凄く良いから。


「わたし、今日はとてもよい日だとおもいます。王太子殿下にもわたしのあこがれのリリアンヌ様にもお会いできたんですもの...」


思わずうっとり眺めてしまう。

もちろん、リリアンヌ様を。

あんまり私が見つめ続けるものだから、リリアンヌ様が少し恥ずかしそうに頬を染めた。


うわー!うわー!

ヤバイヤバイヤバイ。

鼻血が出そう。

なんですかね、その麗しい表情は。

私ごときの視線に恥じらって伏し目がちになるリリアンヌ様マジ眼福過ぎる。


「...アリス嬢?リリアンヌ嬢は私の婚約者だから、そんなに見つめてもあげませんよ?」


私があんまりリリアンヌ様を見つめ続けるからだろうか。

アドニスがリリアンヌ様の肩を抱いて自分のものアピールをしてきた。


アドニス様、顔は笑みを浮かべてますが目が笑ってません。

恐いです。


「っ!?ア、アドニス殿下?」


リリアンヌ様が戸惑った様子で隣を見る。

どぎまぎとしているのだろう。

先程とは比べ物にならないくらいに頬が薔薇色だ。


めっちゃ可愛い。

めっちゃ可愛い。


「ごしんぱいなさらないでください、アドニスでんか。わたしのこんやくしゃはフェリクスさまですから。そんなこわいおかおをしなくても、リリアンヌさまを取ったりしませんわ」


リリアンヌ様の可愛さに内心悶えつつも、そう言っておく。

アドニスの目が恐いからだ。


ゲームのアドニスとリリアンヌ様は婚約者と言ってもあまり仲の良い雰囲気ではなかった。

それは、アリスとの婚約のチャンスをリリアンヌ様が居るためにフェリクスに取られてしまったからだった。

故にゲーム内ではリリアンヌ様だけがずっとアドニスを想い続ける状態だったのだ。


しかし、今は私がアドニスと出会う前にフェリクスと婚約してしまっている。

私に対してゲームのような恋愛感情は無いと見てまず間違いないだろう。

つまり、アドニスにとってリリアンヌ様は邪魔ではない。


恋い慕う相手と思っているのかは分からないが、私のような小娘相手に牽制しようとする程度の執着はあるらしい。


それに気づいて、私は内心狂喜乱舞した。


だって、リリアンヌ様は初めてアドニスに出逢った5歳の頃からずっと片想いを密かにし続けているのだ。

もちろんそれはゲームでの知識だが、先程のリリアンヌ様の反応を見るにアドニスに恋をしているのは丸わかりだ。


なら、アドニスがリリアンヌ様に執着を見せている現状は非常に喜ばしい。


「なら、安心しました」


にっこり。

アドニスの恐い笑顔。


その笑顔の裏に「僕の婚約者に手を出したらどうなるか、わかってんだろうな?」という台詞が聞こえてくるのは、果たして幻聴だろうか?





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