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車内販売物語  作者: 白河かや乃
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居酒屋「星空」

「それで美紀がシフト間違えたせいで少ない人数で行ったんだよ。神崎(かんざき)さんなんてまだ一人で販売できないのに。誰が面倒見ると思ってるの?」


乗務後、東みなと駅近くの居酒屋「星空」で私は車掌の八尋晴輝(やひろはるき)を捕まえて愚痴を言っていた。


「星空」はビルの10階にあり、都会の景色を一望できる全席窓側がウリの居酒屋だ。


生ビールもチーズささみフライもおいしい。港町の夜景も綺麗。

だけど今日の出来事に怒りの収まらない私は、例えチーズささみフライがささみきゅうりとして出てきたとしても気付かず食べていたはず。




山本美紀(やまもとみき)名雪静流(なゆきしずる)は私と同期で入社した。

同期入社は何かとセットで扱われる事が多く、自然と仲良し3人組として周りから認識されるようになった。

だけど本当は、私は美紀が苦手だ。

好きになろうと努力したけど、苦手なものは苦手だった。

優しくていい子なんだけど、あの妙におせっかいな所がうざい。

入社して7年経つのに、細かいミスが目立つのも嫌。


今日だって美紀が自分の乗務する列車を間違えて遅く出勤してきたせいで、本来3人で乗務するはずのところを2人で行く事になった。


朝はまず事務所に出勤して制服に着替えてから、点呼をとる。

美紀はいつも点呼ギリギリの時間に慌てて出勤してくる。今日も通常運転だなと思っていたら、時間になっても来ない。

嫌な予感がした。

「今日山本さんシフト間違えて遅れるって言うから、悪いけど神崎さんと2人で行ってくれない?」

そう告げられた時は卒倒しそうになった。


神崎さんは今年入ったばかりの新入社員で、まだ一人で乗務した事がない。

一通り仕事は教わっていると思うけど、2人で1列車10両の販売なんてベテラン同士でもしんどいのに、事務所は一体何を考えているんだろう?


そんな日に限って車内が混んでいて、「車内販売まだこないの?」とお客様に何度も言われた。


幸い神崎さんは今年の新入社員の中でもよくできる子だったから何事もなかったものの、「私が一緒でごめんなさい」と一日中肩身が狭そうにしていて、こちらまで申し訳ない気分になってきた。これも美紀のせいだと思うと腹が立って仕方なかった。


事務所の人だって、今日みたく新人と2人で行かせたり、遅いシフトの翌日に朝早いシフトを組んだり、休日にわざわざ来月のシフト調整の電話をかけてきたり、もしかして嫌がらせなのかな、と思うような無茶振りを平気でやってのけてくる。



「一度乗ってみろ!!!」

怒りを冷たいビールと一緒に飲み干した。

仕事は楽しい。だけど不満だって沢山あって、もう辞めようかな、と思う時すらある。

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