器用になりたいです!
巧は白く際限なく続く空間にたたずんでいた
彼は辺りを見回すが何も発見できず座り込んでしまった
「いったいここはどこなんだ」
彼の言葉は反響することなく白い空間の中に吸い込まれていった
「奏真さん」
突然声がし巧は辺りを見回した
「誰だ!」
しばらくして目の前に光る粒子が集まりだし形を形成していく
足元から現れだし腰、腹部、胸部、頭の順に現れ
小さな少女の形を成した
彼女は美しい栗色の髪をしておりからだには白いワンピースをまとっていた
(子供……?)
巧が訝しげに見つめていると少女は眼を開け彼をまるで我が子を見つめるように暖かな視線を送った
「私は女神シルフィア」
「奏真さん、貴方は死にました」
「そのようですね」
自分が死んだことぐらい覚えている
あの体がじりじり焼ける感覚は忘れるわけがない
「あまり驚かないのですね」
女神は不思議そうに奏真を眺めている
「そりゃぁ、驚いてないって言うと嘘つくことになりますけどこんな美しい女性何て現世にあんまりいませんからね」
巧がそう告げると女神は顔を赤くし後ろを向いてわなわなと手を動かしている
「あのー女神様?」
巧が彼女を呼ぶと慌てて振り向き咳払いをした
「それで、貴方には別の私が管理する世界に転生させる権利が与えられました」
なるほど、それでこの感じというわけか
「何かほしいものとかあります?」
「欲しいものですか?」
「そうです、何かスキルとか道具とか」
巧はそう唐突に告げられ一瞬悩んだのちある答えをだした
「器用にしてください」
「器用……ですか?」
巧はまるで子供のように眼を輝かせこくこくとうなずいている
「俺は現世で不器用で苦労したんです」
「なので異世界では粟生いった不自由をなく生活したいんです」
「そうですか……」
女神は一瞬悩んだが頷き巧の眼を見据えた
「わかりました」
「貴方が異世界で不自由しない程の器用度をあげましょう」
女神は巧の頭に手をかざした
しばらくし巧の頭上から手をどかした
「これで大丈夫でしょう」
「有難うございます!」
「他に何か望むことはありますか?」
「いえ特にないです!」
「そ、そうですか」
「では、奏真さん、貴方を異世界に転生させます」
「ご武運を」
巧の体は光の粒子に包まれていった
そして巧は意識を失った