一ヶ月の成果
それからのこと一週間は、あっという間に過ぎた
カイルは、最後の一週間を自らの総仕上げ
そして、色々な戦い方を知ることに費やした
午前中は、城下の中心にある
コロシアムでの試合を観戦し
戦い方を学んだ
午後は、魔法そして剣の修行に
費やした
事情を知っているイオナやルチアナは
食事や精神面で色々な手助けをしてくれた
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試合当日、俺は普段よりも
早めに起き素振り等の準備を済ませ
コロシアムに向かった
コロシアムには、父、エルドの知り合いや
配下の者そしてエントリオン公までもが来ていた
会場は、ざわつき試合の開始を今か今かと
待ちわびていた
俺が会場に登場すると、周りは
より一層どよめきかえった
エルドは、カイルより先に来ており
身長の二倍は、あるであろう
鉄槌を両腕に持ち
こちらを気持ちの悪い笑顔で見ていた
その後ろには、カイルの姉であるエレナ
そして、エレナ直属の
「黎明騎士団」が座っていた
「よく、逃げずに来たな」
エルドは、そう言いこちらに歩いて来た
「わざわざ、負けに来るとはいえその勇気だけは、褒めるに値するな」
そう言い、カイルの頭に手を置いた
カイルは、その手を払いひとこと言い放った
「勝ちにきたんですよ」
エルドは、不敵な笑みを浮かべた
「無能がほざけ」
「お前がワシに勝つなど天地がひっくり返っても無理に決まっておるだろ」
エルドは、そう言い放ち
自らの定位置に戻って行った
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その後審判による試合のルール説明が行われた
ルールは、武器破壊、気絶、戦意喪失
このどれかが成立した場合
勝敗が決定する
エルドとカイルは、それぞれ武器を構えた
「始め!」
審判の合図と共にエルドは、身体強化を
行いこちらに突っ込んで来る
カイルは、一切動かず向こうが間合いを
詰めて来るのを待った
「ここにきて怖気づいたか!」
そうエルドが言い放ちカイルに鉄槌を
叩き込んだ
カイルは、避ける間も無く
エルドの鉄槌をまともにくらい
吹き飛び気絶した
誰もがそう確信していた
そう、それしかありえないのだ
しかし、現実は違った
カイルは、衝突の瞬間
加速し、赤の魔法『筋力上昇』を
唱え一気にエルドを切り抜いた
その尋常ならざる速さには誰も
ついていけいなかった
土煙がおさまると
そこには、エルドが倒れていた
観客は、唖然とし会場は、静寂に包まれた
「勝者....カ...イル...ヴァサイット」
ただ審判の勝者を呼んだ言葉のみが
この静寂の中に響いた声だった
カイルは、エルドを見下ろし
会場を後にしようとした
すると出口は、一般兵に塞がれ
カイルは、場内からでれなくなってしまった
カイルが止まっていると
周りをエルドの支配下の騎士20数名が
囲んできた
「家に帰りたいんだが、ダメか?」
カイルの呼びかけに輪の中から
1人の女騎士が現れた
「悪いが愚弟よ、お前のような無能に我が父、三英傑のエルドが、負けたとあっては、困るのだよ」
カイルの姉であるエレナがそう言い放ち
カイルと対峙した
「そうなのか」
「だから大人しくここで死ね!!」
そのエレナの叫びと共に
エルドに全方向から騎士達が襲いかかった
エルドは、それに対してたった一つの
魔法で対抗したのだった
エルドは、上に伸ばし
いっきに振り下ろした
唱えるは、特質系第五練成魔法『帝王の尊厳』
カイルの足元に黒く光る魔法陣が展開する
光を放った魔方陣は黒色の瘴気を発生させ
一気に騎士達を呑み込んだ
オーラを浴びた騎士達は、胸に黒色の剣を
突き刺され倒れてしまった
胸に突き刺さった剣は虚像のように
揺らめき、突き刺さった部分からは
一切の血が流れていなかった
その一瞬の光景に
観客席にいた者達は、恐怖のあまり
叫び、我を忘れて逃げ惑い始めた
「やり過ぎたかな」
カイルは、頭をかきながら、そう呟き
会場を後にした
特質系練成魔法について
特質系練成魔法は、通常の赤の魔法、青の魔法、黄の魔法、緑の魔法、そして特質系の中の黒の魔法、白の魔法を組み合わせて発動する魔法です
特質系第一練成魔法は、上記の中から二つの魔法を組み合わせて発動するもので
第2練成、第3練成と増えるごとに4個、6個と増えていきます