修行の成果
カイルは、エルドさんの指導のもと
着実に力をつけていった
エルドさん曰く
こんなに上達が早いのは才能としかいいようがない
らしい
「カイル、そろそろ模擬戦やってみないかい?」
俺は、いつもの通り型を一から
行っていたところエルドさんに
そう声をかけられた
「やってみたいです」
カイル自身この2週間でかなり実力が
上がったと自負できた
それは、慢心や思い込みではなく
事実だとカイルは、直感していた
「じゃあ、今日の昼過ぎにでもやろうか」
そう言って、エルドさんは、城下に
用事があるといいその場を立ち去った
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その日の正午昼食を終え
二人は、道場の中庭に出た
「間合いは、これくらいでいいね」
エルドさんと俺は間合いを取り
模擬戦用の木剣を手に取った
「勝利条件は、相手に背中をつかせること」
「場外に出すこと」
「武器を落とさせることだ」
カイルとエルドは、集中し
互いを見る
エルドの気迫は、まさに野獣
たっているだけでも腰が引き
脳が逃げろと命令してくる
しかし、カイルは心を鎮め
エルドをしっかり見据えていた
「始め!!」
エルドの門下生の合図により
試合がスタートした
エルドとカイルは共に
流星加速を使い
一気に間合いを詰める
カイルとエルドの激しい応酬に道場は揺れ
門下生たちは、動揺を露わにしていた
先に有効打を与えたのはエルドだった
カイルへの縦断と見せかけ
一気に加速し
下段からの切り上げを繰り出した
カイルの反応は少し遅れたものの
なんとか立ち直し剣で防いだ
カイルは、飛び退き間合いをとる
恐らく単純な剣術では、圧倒的にエルドが上
カイルが勝つには魔法を用い
エルドの隙をつく
もしくは、奇策を繰り出すしかない
再び二人の激しい応酬が始まった
エルドは、終始余裕の表情を浮かべ
嬉々としてカイルに斬りかかっていた
カイルは、剣撃になんとか耐え
反撃の隙を探っていた
試合開始から既に十分が経過した
エルドとカイルは、互いに疲労がたまり
間合いを取り互いの出方を
伺うことが多くなってきた
カイルは、考えに考えぬき
ある作戦を思いついた
カイルは、再びエルドまで間合いを詰める
それにつられエルドが間合いを詰めた瞬間
エルドの溝落に蹴りを食らわせた
エルドは、後に少し下がり
体勢が崩れた
カイルは、その隙を見逃さず
エルドに上段切りを叩き込もうと
飛び上がった
エルドは、体勢を崩しながらも
守りの姿勢をとった
カイルは、剣を振り抜く素振りを見せ
素早く腰にあった鞘を引き抜き右方向から
振り抜いた
エルドは、その奇策に目を見開きそして
場外に飛ばされた
会場は静まり返り
しばしの沈黙のあと
「勝者、カイル!」
会場から拍手が湧き上がった
カイルは、エルドに近づき手を差し伸べた
「見事だったよ、カイル」
エルドは、笑顔でそう述べた
「ありがとうございます」
その言葉で、カイルの初試合は、幕を閉じた
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試合が終わり夜も更けてきた頃
エルドとカイルは二人庭に座り
談笑していた
「まさか、ここまでやるとは、思わなかったよ」
エルドは、苦笑いでそう述べた
「たまたまですよ」
カイルは、機恥ずかしそうにそう述べた
「本試合は、来週だけど大丈夫かい」
「ええ、エルドさんの指導のお陰で幾分自信もつきました」
「君の父上は、力にものを言わすタイプだ」
「僕より近くにいた君だから大丈夫だが、気をつけろよ」
「はい」
「それと、君の父上は、誰彼構わず蹴落とすためならなんだってする」
「あらゆる、不測の事態に注意してくれ」
「はい」
「じゃあ、僕から言えることは、これくらいだ」
「健闘を祈ってるよ」
カイルはエルドと握手を交わし
その場を後にした