父に勝つために
勢いで父と決闘の約束をしたカイルは
ひたすら魔法の修行を続けていた
一週間が経ち足りない知識を補いながら
自らの魔法に磨きをかけていた
「このスキルは、未知数だからまだ成長できるだろうな」
自らが所持する『器用度SS』は、恐らく
自らが望み鍛えればそれに応える形で
色々な恩恵をもたらすのではないか
そうカイルは、予想付けていた
「あとは、あの剛撃と呼ばれる父さんの力をどう見極め戦うか考えなきゃな」
カイルの父の主な戦い方は身体強化系の
魔法を使用して自らの筋力防御力を
上昇させて身長ほどサイズのある
ハンマーを両手に持ち畳み掛ける
完全な脳筋スタイルだ
「やっぱり短期決着型なら、攻撃を避け、体力を消耗させて一気に叩くのが無難かな」
カイルはそう考え防御力上昇の魔術を習得
しようと励んでいた
カイルは、開いていた魔導書を閉じた
「よし、やってみるか」
全身に魔力を流すイメージで力を込める
唱えるのは緑の魔法「防御力上昇」
カイルが短く紡ぐと周りに魔力が流れ出し
透明の薄い膜が覆い始めた
「これで、出来たのか?」
何かが発動している感じはあるのだが
何か試さないことにわからない
「全力で走って壁にぶつかってみるかな」
ついでに速度も上乗せすればより
発動しているか確認できると思い
青の魔法「流星加速」を唱える
カイルは、常人ではなし得ない速度で
壁に向かって走っていく
そして壁の少し手前で背中を向け
思いっきり叩きつけた
「がはぁっ」
カイルは、あまりの衝撃に肺の空気が
全て外に出ていく感覚に襲われた
カイルは悶絶し痛みに耐えた
(全然効いてないじゃないかぁ)
カイルは、自分の行動に後悔しつつ
回復魔法も早めに覚えようと心に決めた
「も、もう少し練習が必要だな」
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それからカイルは魔法の練習をしていたが
剣術の修行をしようとしていたことを忘れていた
カイルの父は基本近接戦闘
故に、遠距離戦闘は、苦手だ
恐らくだが、魔術師との一騎打ちに
備えて魔術への対策も講じているだろう
「剣術もやらなきゃ近接に持ち込まれたとき不味いよな」
カイルは、魔術の練習後にふと、そのような考えがよぎった
カイルは、手数を増やすためなんとか
剣術も使えるようにしたいが
周りに剣を得意とする者がおらず
ほとほと、困り果てていた
そんなことを考えながら
自宅への帰路へついていると
自宅の前に見知らぬ男が立っていた
「あのぉ、うちに何かご用ですか?」
恐る恐るカイルが声をかけると
その男性は振り返り尋ねてきた
「カイルさんですか?」
「そうですが、あなたは一体?」
髪を短く刈り上げ
あご髭を生やした男性は
少しはにかんで答えた
「私は、この城下で剣術を教えている、エルドと申します」
「あなたに剣術を教えにきました」
「はい!?」
カイルは、あまりに都合のいいことに
固まってしまった