序章
ある日唐突に始まった核戦争によって、世界は火の海になった。
家はやけ、水は汚染され、人々は次々に死んでいった。
また、生き残った人々もあまりの環境の厳しさに、地球に住むことができなくなってしまった。
そして計画されたのが、人類転移計画。
それは擬似ワームホールを使って、人類を地球ではないかに転移させてしまおうという計画だ。
しかし、ワームホールというのは行き先を決められるものではなく、ほぼ100%に近い確率で
ワームホールを通った人間は何も宇宙空間に吐き出されることになる。
そうでなかったとしても、ワープした瞬間生き埋めにされる確率や、高度数千メートルの上空に放り出されて、落下死する確率が、惑星の地表面すれすれにワープできる確率に比べて凄まじく高いことは想像できるだろう。
仮に奇跡的に惑星の地表面に奇跡的に降り立つことができたとしても、その惑星の大気や重力が、人間に適したものである確率は非常に低い。
つまり、ワームホールで転移する技術そのものは確立されていたものの、成功確率0の転移計画に賛同するものはいなかった。
ただ一人、俺をのぞいて。
「いいんじゃな?」
「ああ、バシッとやってくれ」
博士が俺の目をみる。
大丈夫。
この世界に何の未練もない。
それはつまり、ここで生きながらえ続けてもも死んでるのと何にも変わんねぇってことだ。
だから、ワープして死亡なんてのも大いに結構さ。
だけどなモルの100乗分の1くらいの確率しかないとしても俺はやるぜ。
俺は成功する。
そんな気がしてんだ。
確率なんて関係あるか。
俺はバカなんでな。失敗と成功。0と1しかわかんねぇ。
だから俺んなかで、確率は五分だ。
「頼むぜ。博士」
「うむ。冥福を祈る。ユキノよ」
ちょ、おい?
冥福って何だよ。
ざけんな!!
って抗議しようとしたら、目の前にワームホールが現れて、俺は吸い込まれた。