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五枚のビスケット

作者: 正義の味方

「ばいばあい」


「ばいばあい


「ばいばあい」


 サッカークラブの帰り、たくろうは仲間達と、ばいばいしました。


「ばいばい」


 たくろうは元気がありませんでした。


 声も小さいです。


 たくろうは、今日も試合に出られませんでした。


 とぼとぼ、とぼとぼ、たくろうの足音も悲しそうです。


 大好きなめぐみちゃんも応援に来ていたのに、試合に出られませんでした。大好きなめぐみちゃんは、


 たかしくんを応援していました。


 悲しくなったたくろうの目から、なみだがこぼれました。


 お(うち)に帰りたくない。


 たくろうは、公園によりました。ブランコに乗って、ぶらぶら、ゆらゆら、ブランコのいきおいで、


 たくろうのなみだが空を舞いました。なみだは空を舞って、花壇(かだん)に落ちました。そして花びらに


すいこまれて、妖精(ようせい)さんになりました。


「たくろうくん、たくろうくん、どうして泣いているの?」

 

 妖精さんが、たくろうにききました。


「ぼくね、サッカーが大好きなんだけど、いくら練習してもちっともうまくならないんだ」


 たくろうが、妖精さんにいいました。


「どうしてたくろうくんはサッカーが大好きなの?」


 妖精さんが、たくろうにききました。


「ええとね、よくわからないけど、大好きなの。妖精さんは何が好き?」


 今度は、たくろうが、妖精さんにききました。


「わたしはお花が好き」


「どうして?」


「よくわからないわ、だけど大好きなの」


 妖精さんはたくろうを見つめました。


「わたし、あなたを好きになったから、特別になんでも願い事がかなうビスケットを五枚あげるわ。目を閉


 じて、手を出して、わたしが、いい、っていうまで絶対目をあけちゃだめよ」


「うん、約束する」


 たくろうは、目を閉じて、両手を妖精さんの方に出しました。 


「はい、もう目をあけてもいいわよ」


 たくろうが目をあけると手の中にビスケットが五枚ありました。t


 妖精さんがいいました。


「ビスケットを食べるときにね、目を閉じてお空にむかって願い事をとなえるの。そうすればどんな願い事


 もかなうから」


 妖精さんが、たくろうにいいました。


わくわく、どきどき。


「ありがとう。妖精さん」


 たくろうは妖精さんにお礼をいいましたが、妖精さんは、もういませんでした。




たくろうがお家の前に帰ってきたとき、そとはもう真っ暗でした。


 空には、お星さまもお月さまもいます。


 たくろうのおかあさんが、たくろうの帰りがあんまり遅いので、怒っているかもしれません。


「どうしよう。怒られるのいやだな。ぼくのお母さん、怒るとすごくこわいから」


 たくろうは妖精さんからもらったビスケットのことを思い出しました。


 たくろうはポケットからビスケットを一枚とって食べました。


「どうか、おかあさんに怒られませんように」


 たくろうは妖精さんが教えてくれたとおり、目を閉じて、空に向かって、願い事をとなえました。


「ただいま」


 お家の中にはいりました。


「おかえりなさい、たくろう。今日の夕ごはんは、たくろうの大好きな、カレーライスよ」


 おかあさんは、ちっとも怒っていませんでした。


 次の日、学校で、さんすうの時間になりました。


 せんせいがいいました。


「みなさん、宿題をやってきましたか?」


「はーい」


「はーい」


「はーい」


 みんなが大きな声で返事をします。


 たくろうは、宿題のことをすっかり忘れていました。


 たくろうはポケットからビスケットをとって、食べました。


「どうかぼくの宿題がやってありますように」


 たくろうは、目を閉じて、窓のそとの空に向かって願い事をとなえました。


 目を開けて、ノートを開くと、宿題がやってありました。



 次の日、給食の献立に、たくろうのきらいなピーマンが入っていました。


お百姓さんがいっしょうけんめいつくってくれたピーマンをのこしたら、先生に怒られてしまいます。


 たくろうはポケットからビスケットをとって、食べました。


「どうかピーマンがなくなりますように」


 たくろうは、目を閉じて、窓の外に向かって願い事をとなえました。


 次の日、サッカークラブの練習で、たくろうはいっしょうけんめい練習しました。だけど、ちっとも


じょうずにできません。


 チームメイトのたかしくんが新しいサッカーシューズをはいていました。


「いいな。ぼくも、新しいサッカーシューズがほしいな」


 たくろうはポケットからビスケットをとって、食べました。


 サッカークラブの練習の終えて、お家に帰ると、おかあさんが、新しいサッカーシューズをプレゼント


してくれました。



 次の日のサッカークラブの大切な試合の日です。

 

 学校にいくとちゅう、交差点で、大好きなめぐみちゃんがころんでいるのを、たくろうは見つけました。


 信号が赤にかわって、大きなトラックが、ものすごいスピードで、めぐみちゃんの方へ走っていきます。

 

このままでは、めぐみちゃんがトラックにひかれてしまいます。


 たくろうは、おおあわてでポケットからビスケットをとって食べました。


「神様どうかめぐみちゃんを助けてください」


 たくろうは、ギュッと目を閉じて、空に向かって、いっしょうけんめい、願い事をとなえました。


 目を開けると、たくろうのすぐ横にめぐみちゃんがいました。



いよいよサッカークラブの試合がはじまります。


 たくろうは、願い事をとなえようと、ポケットの中のビスケットをさがしました。だけど、妖精さんが


くれた、なんでも願い事がかなう五枚のビスケットは、もう、ありませんでした。


「どうか試合に出られますように」


 ビスケットはもうなかったけれど、目を閉じて、空に向かって、願い事をとなえました。


 たくろうは、試合に出場することになりました。


 サッカークラブのコーチが、


「たくろうは、いっしょうけんめい練習したから、サッカーがとてもじょうずになったぞ。試合でも


いっしょうけんめいがんばれ」


「はい」


 たくろうは、大きな声で、返事をしました。


 妖精さんにもらったビスケットがなくても、いっしょうけんめい、がんばれば、なんでも願い事は


 かなうんだ、とたくろうは思いました。


 それから、たくろうは、もっともっと練習して、サッカーが、じょうずになりました。



   「この話で完結します」


 

 




 






 











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