第一章 2-2
「これどうするかな。…ま、いいか」
地面に転がる後輩たちをおいて寮に向かう。
先程のことが気のせいじゃないなら、たぶんあいつが来るだろう。
アタッシュケースを拾い、地面に転がる後輩たちをおいて寮に向かう。
先程のことが気のせいじゃないなら、たぶんあいつが来るだろう。
面倒事になる前に倒れているその場を去る。決意は固めたものの今は会わせる顔がない。
ハルトが去った後、物陰から現れた楓は嘆息する。
後輩と共に森へ入っていくハルトを偶然見かけた楓は能力を使って追い見つけた頃にはもう時すでに遅く終わっていた。
あのまま、現行犯で捕まえてもよかったのだろうが、それをしなかったのは面倒だったからだろう。
「こちら、出水。森で数名の生徒が倒れているのを発見。命に別状はありませんが至急救護班を」
『了解しました。ただちに向かいます』
学園の門付近にある聖十字団本部から人が来るまで約十分。
楓はすぐさまハルトがやった痕跡を消した。
「何やってんだろ私…」
職務から反する行動だが、楓に罪悪感はない。
ただ元相棒を庇っただけに過ぎないので、その行動に特別な意味もない。
(彼が去ったとき、思わなかったし今もその気持ちに変わりはない)
ハルトが何故去ったのか、本当の理由は楓も知らない。
どうでもいいことだと考えるのを止めた楓は救護班が到着するまで応急処置を行うのであった。
あの場から離れた後、適当に森を駆け回ること二十分。
開けた場所に出ると、ようやく目的地にたどり着いた…のだが。
「どこのファンタジー世界だよ」
まず、目を引くのが大きな湖。
その湖畔には立派な二階建てのログハウスが建てられ、色鮮やかな草花が咲き誇る。
ログハウスの表札にはご丁寧に「新田ハルト邸」と書かれ、いい意味で想像を超えた寮だった。
「まさか、中は埃塗れ何てことないよな」