第一章 1-3
そして、その委員長を務めているのが楓だ。
「彼女は島に貢献し、無くした信頼を取り戻した。今の彼女を魔族者と疑う者はいないよ」
「そうですか」
本人はそうは思っていないだろうが組んでから一年前まであいつに迷惑をかけ、去っている後も迷惑をかけていた。
謝ることが出きればいいのだが、嫌がって聞く耳を持たないだろう。
「聖十字団の活動により、犯人は捕まってはいないが事件は無くなった。そして聖十字団を創設した彼女は実質的に今や学園の権力を握っている。使っていないのが不思議なくらいだよ」
「あいつは権力とかを振りかざすような人間じゃねえからな。やって、学園内に行き付けの喫茶店を造るくらいだよ」
一年前から変わっていなければな。
「何にしても君も今日から再びここの生徒だ。聖十字団に目をつけられないように」
「元から面倒を起こす気はない。話が終わりなら帰るが」
「私の話は以上だ。寮のほうは事前に話した通り、学園の裏手にある山の中に新築を建てておいた。家具もあるし、荷物はもう運んであるから好きに使うといい。それとこれは餞別だ」
「…どうも」
見慣れたアタッシュケースを渡され退室する。
ここに置いてきたものが返ってくるとは思ってもみなかった。
「おい」
どこからか声が聞こえたような、気がしたが周りは誰もいない。
気のせいということにしておこう。
「おい、コラ。無視すんな」
怒気をはらんだ声の方向に視線を下げると、そこにはオレンジ色の髪と瞳の小柄な少女がいた。
「…お前。迷子か?」
「喧嘩売ってんのか!」
見た目はどう考えても中学生。
しかし、中身はれっきとした十八歳。
その名は千東奏夢。
楓の友達で元クラスメイトである。
「悪い、悪い。つい昔の癖でな。で、なんかようか?…あれ、千東どこいった?」
「そこまで小さくないわ!」
からかいがいのあるやつで貴重なツッコミ担当。