第一章 1-2
そう言って語りだす学園長の顔は想像できないほど真剣だった。
俺が何故学園を去ったのか。
そして、何故白ではなく黒い制服を着ているのか。
それは天族者についてもう少し語る必要がある。
天族者は体内にマナを保有する器官〈リジェネ〉を持ち、四大属性を操る特殊な人間だ。
一人一つの属性が基本で稀に二属性を使用できる者いるが、四大属性以外はありえない。
しかし、例外が存在するそれが【魔族者】。
“同胞殺し”とも呼ばれ四大属性以外の属性を使うことが出来る。
俺は四大属性の他の属性が使えることを知られ自ら学園を去った。
それが半年前の出来事である。
「あの後、君と組んでいた楓君も魔族者ではないかと疑われてね。本人は表に出していなかったが、相当苦労していたと思うぞ」
「ここに通う生徒なら相棒を決めるのは学園側だとわかっているはずだろ」
アトラス学園は入学前に適正試験がある。
内容は能力テストだが、その結果で比較的相性がいい者同士で組まされ、十月二十七日から十月三十一日のハロウィン祭までの大会に出場する義務がある。
「それは逃げた君が言うことじゃない。ま、そんなこと言わなくてもわかっているか」
顔に出ていたのか。両面を知った学園長はほくそ笑む。
迷惑をかけまいと去ったことが裏目に出るとは思ってもいなかった。
「あの事件があったから仕方ないが、それよりも厄介だったのがその後の事件のほうだよ」
学園長が提示したのは去年の十一月から十二月半ばに起きた連続傷害事件。
死人はでなかったものの多数の生徒が被害にあっている。
「伝説上の魔族者が目の前に現れ、しかも、その近くには死体が転がっていた。好奇心な旺盛な学生かはたまた教員か。事件は謎のままさ」
魔族者とは文献などで残っているものの実在はしていない伝説の存在だ。
伝説上のはずが目の前に実物を見て、自分も試そうとした輩は今も捕まってはいない。
「この島には警察組織などの治安維持部隊が存在しない。そこで作られたのが聖十字団だよ」
悪魔祓いの象徴である十字架。
学園生の組織であるため生徒会と風紀委員が合体したような役割を持っている。
島の治安維持にも貢献しているため、島内の事件の捜査は彼らが行っている。