第一章 2-5
「どうぞ」
「…どうも」
紅茶はあまり詳しくないがそれでも彼女の淹れたモノは他のものと比べることすらおこがましいほどだった。
「紅茶淹れて貰ってなんだけど、俺も今年で十八だ。世話係何かいらない」
世話係とは名ばかりの監視役。
何かする気はないが、身動きが取れないのは面倒くさい。
「そう言われましてもこれも仕事ですので」
「一応聞くけど、どこからどこまで世話をするつもりだ?」
「身の回りの世話全てです。食事やお部屋の掃除。洗濯まで全てこなしますが?」
何を言っているんだこいつは見たいな顔で首を傾げられても困る。
「OK。線引きをしよう」
だが、彼女が帰ることは出来ないため、妥協に妥協を重ね、食事の準備と一階の掃除で落ち着いた。
「では、夕食の準備を始めますがハルト様はどうされますか?」
「明日から学校だからな。荷解きを済ませる」
いきなりのことだがこれぐらい順応出来なくてはこの先やっていけない。
溜息を吐きたい気持ちを抑え、自室である二階に上がった。
一階で夕食の準備を始める咲耶は少し拍子抜けた様子だった。
(あれが例の少年ですか。影流しには驚きましたが、正直がっかりです)
学園長から色々なことを聞かされていた咲耶だが、思っていた以上のモノはなかった。
(油断は禁物。彼自身がどうあれ彼が危険なことに変わりは無い)
彼女の役目は監視と万が一に備えての対処要員を兼ねている。
今は私生活に密着し彼の本質を見極めることが最優先事項である。
「はい。宮美です」
『やぁ、咲耶ちゃん。調子はどうだい?』
通信が入ったため料理を一時中断し、電話取るとその相手は学園長。
監視をしている相手に気づかれてもお構いなしな彼は無警戒で通信をいれる。
「問題ありません。それと、学園長。咲耶ちゃんはやめてくださいといつも申していますが」
『ダメかい?僕としては気に言ってるんだけど。まぁいいか。それで、彼の様子は』
「現在。自室にて荷解きをしています。島に来て一日目。さすがに何か起こす気はないのでしょう」