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そこ惚れニャンニャン、復讐を誓った猫  作者: 大五郎
ウェルダン王国編
5/29

04 殺された、殺した

次の章とワンセットになったので予定のタイトルを変更しました。

 それから一年が経った。


 吾輩は未だコズミ探索の旅に出られてはいない。


 今年は凶作の年であった。

 夏の最初は水不足に悩み終わりは嵐で大きな被害を受けた。

 業突く張りの領主はそれでも重税を課し容赦なく村の食料を奪っていった。


 村人は飢餓に苦しみ吾輩は山野を駆け巡り狩をし果実を採取して村を支えていた。

 教会の坊さんは厄災の原因は森の魔女の所為だと村人を扇動しようとしたが耳を貸す者はいなかった。

 さすがに村の生命線になっている吾輩を除いては餓死者が出ることぐらい分かっていたからだ。


 とはいえ狩り尽し採り尽した結果森の恵みも涸れていき限界を迎えようとしていた。

 それでも吾輩は狩りや採取の範囲を広げなんとかしようと努力していた。


 ある日遠出から夜遅くに村に戻ると村人に総出で迎えられた。

 何人かは泣いていた。

 吾輩が理由を尋ねると村長と両親が死んだことを告げられた。


 実家に戻ると父親と母親の遺体が粗末な布団の上に寝かされていた。

 身体中に切り刻まれた痕があり殺されたことが分かった。


 村人に誰が殺したか尋ねると領主がやったと教えてくれた。

 両親は吾輩が夜遅くまで山野を駆けずり回って食料を集めていることに胸を痛めていた。

 それが限界に近づいていることにも気付いていた。


 両親は決断し村長と相談して共に領主のところに陳情に向かったそうだ。

 そして領主の兵が村に来て村長と両親の遺体を放り出し領主に逆らったため罰したと宣告した。


 吾輩は一晩両親の傍で泣いた。

 翌朝愛用の鉄の鉤爪を持って村を出ようとした。

 しかし村人に止められた。

 吾輩はこれでもまだ我慢するのかと村人に問うた。

 答えは否だった。


 どの道この村の生命線である吾輩を失えば村人は餓死するしかない。

 なら非道な領主に一矢なりとも報いたい。

 だから一緒に行こうと。


 領主は村人達がまさか反乱を起こすとは思っておらず油断していた。

 奇襲はあっさり成功した。

 領主の兵は二十名程度。

 非常に弱かった。

 半数は吾輩が瞬殺した。

 怯んだ半数は村人達に寄って集って袋叩きにあっていた。


 「わ、儂をどうするつもりだ」


 捕えられた小太りの領主は震えながら尋ねた。


 「もちろん殺すニャ」

 「お前は変な言葉を喋る森の魔女!どうしてここに」


 領主は目を剥いて吾輩を見る。

 どうやら吾輩の両親とは知らなかったようだ。


 「お前は昨日ここに陳情に来た村長と夫婦者を殺したニャ。その夫婦者は吾輩の両親ニャ」

 「なんだと。あ、あれはあ奴らが悪いのだ。平民の分際で儂に逆らうから」

 「お前が重税を課して村の食料を奪ったニャ。餓死しないために陳情するのは当たり前ニャ。それをお前は殺したニャ。なら黙って餓死するか戦うかしかないニャ」

 「ば、ばかな。儂を殺せば王都から軍勢が差し向けられてお前達は皆殺しにされるぞ」


 無意味なことを言う。


 「お前に逆らった以上、お前を生かしておいても吾輩らを皆殺しにするつもりニャ」

 「た、助けてくれ!食料は返す。殺したことも謝る。だから助けてくれ!」

 「殺された命は戻らないニャ。だからお前も死んで償うニャ」


 鉄の鉤爪で顔を滅多斬りにした。

 暫く領主は足掻いていたがやがて静かになった。


 領主の館を制圧した吾輩らは食料を奪い返し村に帰還した。

 村人達は久々に飯を腹一杯食って笑い合っていた。


 皆王都から軍勢が送られてくるのは分かっていた。

 しかし今を生き延びられた事を喜び楽しんでいた。

 そして逃れられない死を覚悟していた。


 だが吾輩は違った。

 死ぬつもりなんてなかった。

 だからなんとしても王都からの軍勢に勝つつもりだ。

 復讐の誓いを絶対に果たすために。

次回「05 戦った」の予定です。

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