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そこ惚れニャンニャン、復讐を誓った猫  作者: 大五郎
ウェルダン王国編
4/29

03 発情された

中々短くまとめられず試行錯誤しています。

 あれから更に五年経った。


 婆ちゃんが死んだ後直ぐにコズミ探索の旅に出ようと思っていたが図々しくも治療を頼んでくる村人達を見捨てられなくてズルズルと留まっている。

 婆ちゃんに不義理をしたと泣いて謝ってくる顔見知りからの依頼を無下にも出来なかったからである。


 熱を出して苦しんでいる我が子を助けるために地面に頭を擦り付けて泣いて謝り懇願する顔見知りのおばさん達を見捨てるほどには非情になりきれなかったからだ。

 子供が回復に向かい様子見をしている内に別の治療の依頼が入り1人ひとり謝罪を受け入れ治療している間に五年の月日が流れていたのだ。


 しかし吾輩はコズミへの復讐を諦めた訳ではなくむしろ日々焦燥感を募らせていた。

 こんなところで足止めされている内にコズミに老衰で死なれ往生されでもしたら元も子もないからだ。


 ヤツは吾輩がズタズタにして殺す。


 これこそが絶対にして何事にもまして重要な誓いだ。

 そんな訳で猫だが虎視眈々と出発の機会を狙う吾輩なのであった。


 近頃ではそれを後押しする事情もあった。

 吾輩も十五歳になり昔はペッタンコだった胸も十分膨らみ見た目も可愛い娘に育ったため発情して言い寄ってくる雄、もとい男が後を絶たないのだ。


 同年代の娘達も吾輩にばかり言い寄ってくる若い衆に腹を立て吾輩を嫉妬の炎で燃やし尽くさんばかりである。

 自分らに男を惹きつける魅力がないのを吾輩の所為にするのは如何なものであろう。

 御主人様一筋の吾輩が他の男を相手にすることなどあり得ないのに媚びを売ったかの如く語るのは止めてもらいたいものである。


 「なあ、いい加減、俺のものになれよ」


 ほんのかすり傷で森の魔女の家を訪れた若い男が言った。

 小さい頃から率先して吾輩に構ってきたヤツである。

 昔は吾輩のワンパンでよく泣いていたが今では村で二番目の腕っ節である。


 一番は誰だって?

 それはこの吾輩である。


 まあそんなことはどうでもよろしい。


 「なる訳がないニャ」


 吾輩は相手の左手を消毒して薬を塗り包帯を巻く。

 治癒魔法ならもっと早く簡単に治るが乱用は婆ちゃんから厳禁されている。


 治療以外で使うと怖れられるが治療で使った場合は便利なため術師にも患者にも依存が強くなり過ぎるとのことだった。

 才能のある者が滅多に生まれない魔法使いの治癒魔法に頼り過ぎると薬師による治療法が廃れてしまう。

それではいなくなった場合に困ったことになると言っていた。


 確かにその通りである。


 もっとも現在後継者がいないため吾輩が探索の旅に出てしまえばこの家にある薬剤を使いこなせる者などいなくなる。

 結局先の見通しより権威を怖れ後継者を積極的に育てようとしない村人の責任だ。

 猫にも劣る見通しのなさである。


 因みに語尾のニャは猫であった前世の影響が出ているのかどうしても付いてしまう。

 吾輩を幼い内から知っている村の人間は慣れてしまったようだ。


 「昔のことなら謝るからさぁ」


 いや吾輩が一方的にボコッていただけだから謝られても困る。

 コイツも昔に較べたら随分人当たりがよくなってきた。


 「謝れるようなことはされていないニャ。さあ治療はすんだニャ。さっさと出ていくのニャ」


 吾輩はけんもほろろに追い出した。


 これで本日三人目である。

 真面目に仕事をしてろ。

 中には力尽くで押し倒そうとするバカもいるがそんな不心得者は容赦なく叩き出している。


 先日もこの辺りを治める領主が来た。

 発情し欲望でギラギラした目をしている小太りのおっさんだ。

 側室に迎えてやるから感謝しろと言ってきたので家来共々ぶちのめしてお帰りして頂いた。

 どいつもこいつもである。


 しかし今看ている本当の病人達を見捨てて出ていく踏ん切りもつかず時間だけが過ぎていった。

 こうして五年目は発情した雄、もとい男達に言い寄られている内に暮れていった。

次回は「04 殺された」の予定です。

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