20 治療した
前振りです。
吾輩達はレア王国を出て旅を続けた。
風の噂に新生国家ウェルダンはミディアム王国軍を破り国を守り切ったと聞いた。
ハンスががんばったのだろう。
今度会ったら褒めてやらねばなるまい。
旅の道すがら各国の様子を見ていたがどの国でも平民は困窮していた。
王や貴族、教会の坊さん達は重税や御布施で肥え太っていた。
平民達は諦めていた。
強大な武力を持つ王や貴族達に力で抗う術がない。
ウェルダンのような例が稀なのである
諦めた彼らは教会の坊さんに縋る。
教会の坊さん達は無私の奉仕者であれば来世で豊かで幸福な生活が出来ると説く。
平民達は現状が困窮して苦しいから来世での豊かで幸福な生活を夢見て無欲で従順にあろうとする。
王や貴族は抵抗しない平民から容赦なく搾り取る。
そんな国ばかりだった。
ウェルダンのように餓死する寸前まで追い詰められなければ夢から覚めないのだろう。
吾輩は転生した時には人とは賢い生き物だと思ったものだが猫にも劣る愚か者でもあったのだ。
救いようのない連中だ。
神聖サーロン法国に近づくほど教会を盲目的に信じようとする連中が増えていった。
聖地でもあるサーロン法国を目指す貧しい巡礼者達も多かった。
彼らは貧しい生活の中から僅かな金を少しずつ工面して一生に一度の巡礼の旅に出るのだ。
教会も権威を誇示するため聖地巡礼を奨励しているため巡礼者は入国税も免除されている。
吾輩達はサーロン法国の向こう側にあるファルス王国を目指しているため巡礼者達と同道していた。
遠回りする必要を感じなかったし巡礼者達に混じっていれば入国税も免除されるからだ。
大量の巡礼者達が移動すれば怪我人や病人が山ほど出るのは当然である。
多くの者はそのまま道で野垂れ死にしていた。
さすがに見兼ねた吾輩は片っ端から治癒魔法で直していった。
きりがないと分かっていても毒を食らわば皿までである。
吾輩は直して直して直しまくった。
何時しか巡礼者達は吾輩の事を聖女様と呼び始めた。
吾輩は正々堂々森の魔女であると名乗った。
しかし彼らは森の魔女と名乗る聖女様と呼び出した。
諦めた吾輩はその呼び名のままで放っておいた。
やがてサーロン法国の首都である聖地サーロンに吾輩達は到着した。
その頃には吾輩達は吾輩を慕って集まった数万の巡礼者の集団になっていた。
次回「21 ひっくり返した」の予定です。




