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そこ惚れニャンニャン、復讐を誓った猫  作者: 大五郎
ウェルダン王国編
2/29

01 生まれた

テンプレ転生です。

 トクン、トクン。


 音がする。


 トクン、トクン。


 午睡に揺蕩う夢の中のようだ。


 トクン、トクン・・・、ドックン、ドックン、ドックン。


 音の調子が変わり緩やかな安寧が激しい情動になる。


 ドックン、ドックン、ドックン、ドックン、ドックン。


 音が高まり周囲の圧力が増す。

 押し潰されるような苦しさが長く繰り返し続きやがて一気に安息の暗闇から苦痛に満ちた光の中に押し流される。


 「ミャー、ミャー、ミャー」


 吾輩は苦痛に抗議の声を上げた。


 「kd;jf;あljk」


 聞き慣れない人間の女の声が聞こえた。

 言葉も聞いたことのない言葉だ。

 光は分かるのに物を見ることは出来ない。


 「ミャー、ミャー、ミャー」


 出来るのは抗議の声を上げることぐらいだ。


 「jgpをうgvm:;s」


 又聞き慣れない言葉が聞こえる。

 今度はしゃがれた声だ。

 やはり聞いたことのない声、聞いたことのない言葉。


 ここは何処だろう?


 その疑問がこれまでの記憶を呼び覚ます。


 御主人様がコズミに殺された!

 吾輩もコズミに殺された!

 何度生まれ変わっても奴らを絶対に殺すと誓った!

 ならば吾輩は誓いを果たすために生まれ変わったのだ!


 「ミャー、ミャー、ミャー」


 周囲の状況は分からない。

 しかし吾輩は転生し復讐出来る喜びの声を上げた。



 それから一週間。

 事はそれ程簡単ではないことに気付いた。


 まず最初に吾輩は猫ではなくなっていた。

 鋭い爪と肉球がついていた前足はプニュプニュした『手』に変わっていた。

 後ろ足も同様にプニュプニュした『足』に変わっていた。

 目は見えるようになったが夜目はほとんど効かなくなった。

 胴や顔も猫のそれではなくなっていた。

 身体も上手く動かせない。


 最初の日に聞いた声は人間の母親のものだった。

 つまり吾輩は人間に生まれ変わったのだ。

 人間の成長は遅い。

 それだけコズミに復讐する日が遠のいたのだ。


 「ミャー、ミャー、ミャー」

 「kgjwぽrjgvbvb:;s」


 悔しさのあまり泣き喚く吾輩を人間の母親が優しくあやしおしめを調べ母乳を与えてくれる。

 身体は本能に正直でその乳房にむしゃぶりついて母乳を飲んでいく。

 肩に乗せられ背中をさすられげっぷが出る。

 子猫に戻った気分だ。

 今は赤ん坊なのだからそう違いはないけど。


 さて暫くそんな日が続き人間の赤ん坊の生活に慣れてきて人間であることの利点にも気付いてきた。

 物事が深く広く考えられるようになっていた。

 猫の時はあまり考える事が出来なかった。

 物覚えもよくなっていた。

 猫の時は精々単語を聞き覚えるぐらいしか出来なかった。


 でもこの赤ん坊の頭はどんどん人間の言葉を覚えていった。

 人が話すのを聞いて意味を理解し考えこの家の外の状況まである程度予想出来るようになっていた。


 ここは農村で父と母は農民だ。

 吾輩には兄妹はいない。

 家は粗末な木製で電化製品は一切ない。

 テレビ、冷蔵庫、洗濯機、そして吾輩を威嚇する掃除機。

 何もない。

 水道もなく井戸で水を汲んでいる。

 道路は舗装されていないでこぼこで車は手押し車ぐらいしかない。

 税は高く領主は業突く張りだ。


 順調に情報は集まっている。

 猫には出来ない芸当だ。

 猫の足で探していたら長い時間が掛かったろう。


 コズミに復讐する日も近い。

 吾輩はその日を夢見てほくそ笑むのだった。

母「あの子また変な笑い方をしている」

父「泣き声も変だし」

母「困ったわね」

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