00 誓った
更新は不定期になります。
吾輩は猫である。
名前はミュウ、白い綺麗な毛並みをした雌猫である。
御主人様の名前はシュン、コーコーというところに通っているガクセイという身分であるらしい。
難しくて吾輩にはよく理解出来ない話しである。
毎日家を出て帰って来て夕ごはんを食べて遊んでくれて眠って起きて朝ごはんを食べて又家を出る繰り返しである。
吾輩の巡回と同じようなものだろうか?
カーサンという人が毎日ごはんをくれるので媚びを売っているが吾輩の主人は御主人様だけなので暫く相手をしてあげたら巡回に出る。
近所のボス猫が言い寄ってくることもあるが吾輩の方が強いので追い払っている。
この身が猫なのが恨めしい。
そうでなければ御主人様と結ばれて沢山の子供を産んであげられるのに。
近頃気になっていることがある。
御主人様が帰ってきて私を撫でながらケータイでリサという人間の女とよく話しをしていることだ。
雌の勘でリサという女は吾輩の敵だと分かる。
いずれ決着をつけねばなるまい。
それと御主人様がリサと話している時コズミという名前を聞くようになった。
温厚な御主人様が憎々し気に言っているところをみると御主人様の敵らしい。
出会うことがあったら引っ掻いてやろう。
セージカのムスコとやらで好き勝手をやっているヤツらしい。
「行ってきまーす」
今日も今日とて御主人様はトーコーしていく。
吾輩もカーサンにごはんをもらって暫く相手をしてやったら朝の巡回に出る。
今日は御主人様が少し不機嫌な様子だったので心配でコーコーの方に足を伸ばしてみる。
いつもは御主人様についてくるなと言われているので行かないが妙な胸騒ぎがする。
今日は特別だ。
ドサッと何かが倒れる音がした。
家と家の隙間を抜け路地裏に入っていた吾輩はその音に御主人様の気配を察知する。
その方向に急いで向かうと人間の女を背中に御主人様が尻餅をついていた。
正面には御主人様と同じガクセイ服を着た三人の人間の男がいた。
「シュン君よー、俺はリサに近づくなって言ったよなー」
真ん中の小太りの男が耳障りな声で喋る。
「古住、お前にそんなことを言われる筋合いはない」
御主人様の凛々しい声が響く。
顔には殴られた痕があった。
小太りの男がやったのだ。
あれがコズミという御主人様の敵なのだろう。
吾輩は飛び掛かる隙を見計らう。
「言っても分からないようなら身体に聞かせるしかないよなぁ」
コズミがナイフを取り出し御主人様に近づいていく。
「シュン君・・・」
御主人様の背中の女は只震えているだけだ。
声からリサという女だと分かる。
震えているだけなんて情けない。
「貴様が死んだらリサは俺の女にしてやるよ」
ヘラヘラ笑いながらコズミは御主人様に近づいていく。
「おい、古住、殺しは不味いって」「そうだぜ」
取り巻きらしい男達が喋った。
「うるせい、親父がなんとかしてくれる。もしもの時にはお前らのどちらかがやったってことにしてやるよ」
「そんなヒデェーよ」「そうだ」
「散々俺のお蔭でいい目をみてきたろう。それにここの警察も親父の言いなりだ。お前らが嫌でもどうにもならねぇーよ」
コズミが笑う。
「本当にお前はクズだな」
御主人様が立ち上がりコズミを睨みつけた。
「抜かせ!」
コズミが御主人様との距離を詰めた。
今だ!
吾輩はコズミの顔面に飛び掛かった。
「な、なんだと!?」
コズミはいきなり顔面を覆った吾輩に慌てた。
吾輩のその顔を徹底的に引っ掻く。
コズミは闇雲にナイフを振り回すがそんなものが当たるはずもない。
吾輩はひらりと躱した。
「クソがー!」
コズミは顔を押さえてヨロヨロとナイフを振り回している。
取り巻き達は慌ててコズミに近づこうとするが振り回されているナイフが恐くて近づけない。
「今だ!」
御主人様がリサの手を引きその場を逃れる。
「ミュウ、よくやった。ついて来い!」
御主人様が吾輩の活躍を見てくださったことに喜びを感じつつその場を後にした。
それから数日平穏が続いた。
吾輩はいつものように御主人様を見送る。
「行ってきまーす」
いつものように御主人様は吾輩の頭を撫で出掛けていく。
パーン!
玄関の外で大きな音がした。
吾輩は開いているドアから急いで外に出た。
そこには生気なく倒れ伏し血を地面に溢れさせている御主人様の姿があった。
吾輩は御主人様の側に駆け寄る。
パン!パン!
再び大きな音がして激しい激痛と共に衝撃を受け吾輩ははね飛ばされた。
熱い何かが身体から溢れ出るのを感じる。
「ヘヘッ、いい気味だぜ」
大きな音のした方からコズミの声がした。
黒服の男達に挟まれて小太りのコズミの姿が見えた。
黒服の男達は手に黒い金属の塊を持っていた。
こいつらが御主人様と吾輩をこんな目に合わせたんだ!
吾輩は薄れゆく意識の中で誓った。
お前らは絶対に許さない!
何度生まれ変わっても絶対に殺す!
そして吾輩の意識は途絶えた。
ありがちな展開で行くつもりですが急遽はっちゃけるかもしれません。