東陽の守り人
陽炎町のほぼ全体を見渡せる丘の上にある学校、東陽学院は今日、新学期を迎える始業式が行われる。
入学式は既に終わっており、1年生もこの行事には強制参加のため、やる気のない顔をして登校する人が多い。
その中でもとびきりの元気と笑顔を見せる少女がいた。
「篠宮さん、ちょっと手伝ってもらえるかしら?」
「あっ、はーい」
「詩音先輩、ここってどこに配置すればいいんですか…?」
「あっ、ここは、、、あそこよ」
先生や後輩、同級生に頼られ人望の厚い少女の名前は篠宮詩音。
東陽学院の2年生であり生徒会長である優れた人物である。綺麗な黒色の髪のロングヘアーで、瞳は綺麗な青。身長は160あるかないか、157程度の身長だ。しかもでているところはちゃんとでている。
今、彼女が行なってるのは、始業式の準備である。
なぜこれほどまでに準備がかかるというのは、始業式も兼ねて部活動の紹介など、つまり生徒集会を開くためである。其の為、理科系の実験をメインにしている部活動が参加するため念のための作業である。
それから数分経ち、準備が終わったのか篠宮は生徒会室に戻り一息つく。
「やっぱりこの席が落ち着くわねぇ……」
達成感のようなため息をつきながら自分で淹れた紅茶をすする。その姿はまるでどこかの令嬢にも見える美しく優雅な姿だった。
「そんなこと言うと、まるで女王様みたいですねぇ」
篠宮の背筋がピーンと伸び、口に含んでいた紅茶を思わず飲んでしまう。
「うぐっ、げほっげほっ!さ、咲桜!?いつからそこにいたのよぉ~」
彼女を驚かせてクスクス笑っている少女は、伊月咲桜。東陽学院生徒会、副会長をしている。身長は160を超えたくらいで、瞳の色は特徴的な赤。
いきなり喉を通ったからなのか咳き込む。目には少し涙をため顔を赤くしている。
「まぁ強いて言うなら、『この席が~』からですね♪」
「ほとんど最初からね……」
呆れたような恥ずかしさのような、どちらの感情も混じった溜息を吐き出す。
「ところで、始業式と生徒集会の準備は終わったんですか…?」
「終わったからここで一服してるんじゃない……」
「それもそうですね。あっ会長、私の分も淹れてもらえますか…?」
「いいわよ」
2人の少女の和やかな会話が生徒会室に響く。生徒会室は学校とは別の校舎にあり、そのほとんどが学校に残った成績や部活動の部室になっている。そしてこの生徒会というのはちょうど3階建の校舎の真ん中。時計が置いてある場所である。
「ここからの景色っていいよねぇ」
「そうですね」
「ところで、篠宮さん…」
「なに、咲桜…?」
「‘幼馴染‘との関係はうまくいってるんですか…?」
思わず口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「な、ななな、なにを言ってるのよ!!」
動揺したため心拍数が上がり顔がみるみる紅くなる。このままではいけない、と
「と、ところであなたこそどうなのよ?!気になる人くらいいるんじゃないの…!?」
なんとか見つけたその場しのぎの質問を口にするが、
「私にはそう言う人は見つからないので……」
フフッ、と咲桜が笑い、篠宮の顔はもっと紅くなる。
「からかい甲斐がありますね会長は」
「からかわないでよ!!」
和やかな雰囲気が醸し出される。
《警告、警告。付近に霊獣発生。ランクはA+です。生徒の方々は速やかにシェルターに隠れてください。》
さっきまでの和やかな雰囲気は消え今あるのは沈黙だけだ。それを破ったのは生徒会長の篠宮だ。
「そんな、こんな時に霊獣!?しかもA+なんて…」
篠宮はカップに入っていた紅茶を一気に飲み干し、部屋にあるロッカーを開ける。なかには学生には似合わない拳銃や刀などのいろいろな武器等が置いてある。
篠宮はその中から、太刀を一本取り生徒会室を出ようとする。
「援護はいりますか……?」
伊月は心配そうな顔をせず、逆に微笑ましくなっている。
「いらないわ。それより全校生徒の誘導と援護をお願いしてもいいかしら…?」
「お願いもなにも、私たちはそのためにこの学校にいるんですから」
「それもそうね…」
そういい、篠宮は人間離れした身体能力を持っているのか、生徒会室のベランダから飛び降りる。3階建のため高さは約8メートルほどある高さを難なく飛び降りる。
だがこれは彼女にとっては普通のことであり、周りのものも異常だとは思っていない。
それは、彼女が『魂の救済』のメンバーだからだ。
魂の救済のメンバーのほとんどが身体能力が優れており、体内に秘めている力を発揮することでその力が何倍にも膨れ上がり、篠宮のいように跳躍や飛び降り等ができるようになる。
「相変わらず、すごいですねぇ、会長は……さて私は自分の仕事をやらなければ」
フゥ、とため息をつき伊月は生徒会室を後にする。
◇ ◇ ◇
陽炎町のほぼ全てを見渡せる丘の上にある学校、東陽学院に続く坂を尋常じゃない速さで篠宮は駆け抜けていく。
「まさか、A+の霊獣に出会うなんて、ついてないわ」
心底嫌そうなため息を吐き出す。だがこれを放っておくわけにはいかない。これを放っておいたら町はめちゃくちゃになる上、自分の階級も下がってしまう。それだけは阻止するため篠宮は力を全開にして坂を駆け落ちる。
彼女の体の周りは、白く淡い光で包まれている。霧のような光は彼女が走るたびに、黄金色に輝く。
「ここまで来ればあと1kmくらいかしら?発勁を止めてもいいかな」
そう言うと、篠宮の体を漂っていた白い淡い光はあとも無く消える。さっきとは違いスピードは落ちたが普通の女子よりは圧倒的に速い。誰が見ても陸上選手かアスリート選手と間違えるほどの速さだ。
霊獣といっても相手はS+だ。これ以上力を使っていては対応できなくなるからだ。
「よし、霊獣はあそこね……」
下り坂ということもあって、予定よりも早く着きそうだ。もう霊獣の背中が見えてきた。
「あれ、もしかして人が襲われている…?」
目を凝らして人影を見る。
「まさか……!?」
篠宮の顔色が変わる。青ざめ、焦りや怒りが入り混じった表情になっている。節約していた体力を発勁に使い坂を猛スピードで降りていく。
「そ、んな……」
目の前に広がっていたのは、壊れた壁。散らばる血痕。霊獣の足跡。そしてその奥にあるのは、
「し、んご……?」
やばい、久々の投稿でやばいよぉぉぉぉぉっぉぉ
見てくださった方ありがとうございます!