安心感
その日、僕のスマートフォンに数件のメッセージが届いた。
その内容は、一律して彼女についての質問だった。
友人(仮)達からの通知に憂鬱になりながらも、1件ずつ返信をする。この場合、なんと説明したらいいのだろうか。とりあえず、彼女とは最近仲良くなったとだけ返信する事にした。
しばらくしてスマートフォンを確認する。予想通り、、、いや、予想よりも酷い。友人(仮)達からの反応は芳しいものではなかった。
あいつと仲良くするのはやめておいた方がいい。
あいつは不良と繋がりがあるらしい。
あいつと関わるとろくな事がない。
あんな無愛想なやつのどこがいいんだ。
あいつは見た目がちょっと良いだけの勘違い女
先生に色目を使って成績を上げてもらっているらしい
などなど、男女関係なく、皆から彼女に向けられる評価は酷いものだった。あたかも事実のように噂話が膨れ上がり、もう取り返しのつかない所まで広まってしまってる。
悪い噂の出どころは定かではないが、悪意のある人間が広めたことは間違いないだらう。
もはや、学校に彼女のことを擁護する声は存在しなかった。
次の日、今日も朝一番で登校した僕たちはいつもと変わらず机にき読書をしていた。しかし、なんとなく居心地の悪さを感じ、少し本から目を離して彼女の方を見る。
いつもは、ただそこにいるものと思っていたが、知り合いになった今、教室に二人だけというのは気を使う。人に嫌われまいと今の今まで努力していきた僕からすると、この状況は非常に気持ち悪い。
「君、本当に嫌われているようだね」
人に話しかける言葉としては0点だが、、、彼女はいつもの無表情で答える。
「ええ、そうね。おそらくこの世に、私の事が嫌いじゃない人は存在しないんじゃないかしら。」
「.そんなことは無いんじゃないか?」
「そんな事あるのよ。だいいち、あなたも私の事嫌いでしょ?」
相変わらず感情は読み取りずらいが、そう言った彼女は、こころなしか悲しそうに見えた。
「............」
僕は人間が嫌いだ。しかし彼女のことは嫌いなのだろうか。彼女と会話している時、他の友人達と話している時のような嫌悪感は感じなかった。
それはおそらく、彼女からは悪意も好意も感じないからなのだろう。いつも無表情な彼女だからこそ、僕は彼女と話している時、耐え難い苦痛に苛まれることは無い。
「......好きではないけど、嫌いではないよ。」
彼女は目を見開き、すぐにいつもの表情に戻った。
「......そう、」
「ああ、」
「でも、私はあなたが嫌いよ。どうやら、私の片思いだったようね」
この時初めて、彼女の口角が上がったのを見た。
ほんの一瞬見せたのその笑顔、何故かいつものような嫌悪感は沸き起こらず、透き通るようなその表情に、僕は、安心感すら感じた。