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桃園結義

一気に書きたかったので、今回は結構長めです。

丁度その頃、幽州にも黄巾の波が迫っていた。

役所の前に、触れ書きの札が立てられており、その前に人だかりができていた。


世間を騒がせている黄巾が、とうとう我々のところにもやって来た。

義勇兵として、ともにこの地を黄巾から守ろうではないか。



「義勇兵だとよ」

「冗談じゃねぇ。俺は家族と一緒に逃げるぜ」

「とは言っても、地の果てまでも追ってくるぞ」

「畜生、何が『天下を救う』だ。やってることはただの盗賊団じゃねぇか……」


この頃には、張角達は膨れ上がった軍勢を統率し切れずにいた。

人々を救おうとしていた筈の黄巾軍は掠奪を始め、金目の物を奪い、抵抗する者には死を与えた。

その上、張角達はそれを受け入れ始めていた。


話が終わったのか、皆が立て札のもとを去って行く。


一人の青年が後に残った。

耳は肩に、腕は膝に届かんばかりに長く、唇は紅を入れたように赤い青年である。

考え込む素振りを見せていたが、やがてひとつのため息を漏らしてその場を去ろうとする。


――その時、ドンと響く声がした。

「手前ぇは、この地に世話になってるってのに、女々しく逃げようってのか!!」

見ると、まん丸い大きな目に、逆立った虎髭の大男が立っている。

「実は、応募したいと思ってはいたのですが、家が貧しく、義勇兵等とても……」


装備については、自分たちで用意しなければならない。


「そうか、なかなかの心意気だ。だったら、俺と一緒に旗揚げしないか?少しは金の用意もあるぞ」

「その話、伺いましょう」

すっかり意気投合した二人は、飲み屋で話をすることになった。




二人が注文を終えたところで、一人の男が店に入って言った。

「店主、私にも酒をくれ。黄巾賊との戦いの前に一杯やりたい」

見れば、赤ら顔に切れ長の目、腹まで届く長髭の大男である。

二人は顔を見合わせ、その男を加えて話を始めた。


「俺の名前は張飛(ちょうひ)、字は翼徳(よくとく)だ。近所で肉屋をやって暮らしている」

「私の名前は関羽(かんう)、字は雲長(うんちょう)。各地の悪人を斬りつつ旅をしていましたが、義勇兵募集の触れを見て参加することに決めました」

「私の名前は劉備(りゅうび)、字は玄徳(げんとく)です。(ムシロ)を織って暮らしていましたが、ただの筵売りではありません。私は中山靖王(ちゅうざんせいおう)劉勝(りゅうしょう)の子孫で、景帝(けいてい)劉啓(りゅうけい)の玄孫に当たります」

「それでは、漢室(かんしつ)の血が流れているのですか」


劉備の家には、大きな桑の木があった。

彼の幼少期、預言者がこの木を見て言った。

「この桑は霊木で、根本から皇帝がうまれるだろう」

すなわち、後に皇帝となる劉備のことである。


「なかなか見どころのある野郎だと思っていたが、思った以上の方だ。いや、失礼しました」

話は一層盛り上がり、あっという間に時間が過ぎていった。


そろそろ店も閉まるところで、張飛が言った。

「俺の家の隣に桃園がある。三人で義兄弟の誓いを立てよう」

「「名案だ」」


翌日。

劉備は寝苦しさに目を覚ました。

張飛の足が乗っかっている。

店が閉まってなお飲み足りない張飛の家で、三人で飲み直していたのだ。


「おお、これは……」

庭に出てみると、白雲が出て、良い日和。視線を落とせば、見事な桃の木が立ち並んでいた。

「今日はいい日になりそうですね」

「天も我らの誓いを聴き入れてくださるでしょうな」

見れば、二人が起きてきていた。



「「「我ら同じ日に生まれずといえども、願わくは同じ日に死せん」」」

年齢順に、劉備を長兄、関羽を次兄、張飛を末弟として義兄弟の契りを結んだ。

「二人も兄貴ができた」と張飛が喜び、

「共に苦難を乗り越えよう」と関羽、

「喜びは三倍だ」と劉備。


青い空では、白い雲が一斉に動いていた。

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