ラグナロク〜神々の冒険者〜
【ここは神々の世界 バルト原生林にて】
私の住む村では月に一度森を抜けて街へ降り、生活に必要なものを買い揃て村に戻って来る”買い物”がある。今回の買い物は私がやるように任命された。
朝早くにこの森を出たら丸3日くらいで家に戻って来れるくらいの距離と時間である。私は今、大きめの籠を背負い、お金を確認して靴を履いて出掛ける手前であった。
「エルフリーデ、お金はちゃんと持った?」
「持ってるよ。ほら」
心配性な母のために私は財布の中身まで母さんに見せてあげた。
「お守りはちゃんと持ってるの?」
「お守り?!あー、あれのこと?別にいらないでしょ」
「そんなこと言わないの。はい、持って行きなさい」
「別にいいよ、ただの買い物に行くだけじゃん。遠いけど…..」
そんな私のいうことを無視して母さんは私の手にお守りを握らせてくれた。
「このお守りを持ってると森の加護を受けることができるのよ。いざという時にあなたを助けてくれるわ」
「はいはい。この重たくなる籠を代わりに持ってくれた方がよっぽど助かるけどな」
靴を履いて準備万端、私は家のドアを開けていよいよ買い物に出発した。
「じゃあね母さん、お父さん。余ったお金で甘い物でも買っていい?」
「ええ良いわよ。自分へのご褒美に使ってちょうだい」
「じゃあ行ってくるよ」
私は両親に挨拶して、村長さんにも一応挨拶してこの村を出た。
草木が生い茂る所だろうが、地面に苔が生えていて滑りやすそうな歩きづらい場所であっても私、森の神からすれば庭も同然である。
そしてしばらく歩くとフィーバータイムは終了して森を抜けた。ここから街まで歩いて行くのが大変である。
いつも森に引きこもっている私からしたら、ここら辺は完全に未知の領域なのである。それに周りからもキョロキョロ見られて恥ずかしい……
私たち森の神は森の中に住む為に、小さな物音にですら反応できるようにと、耳が進化の段階で大きくなったのである。
私の外観的特徴は耳が大きくて尖っていることである。よくエルフなんて言われている。これが森の神の特徴であり、珍しいのかよく見られる。
そして、街に到着した。もうこの時点で2日くらいかかっている。ここで買い物を行なって少し時間があるから何か甘いものでも買って、食べながら村に帰るとしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
買い物が終わった。後は余ったお金で何を買おう。クレープ….いやでも途中で中のクリームが溶けるな。りんご飴でも買おうかな。
私は甘いもので頭の中がいっぱいであり店をさろうとした瞬間、店長に呼び止められた。
「あーちょっと…..」
「はい、なんでしょうか?」
「あんたって森の神だよね?森は無事だったのかい?」
「ええ、私は森の神ですが森は無事だったとは一体なんのことでしょう?」
「聞いた話によると最近、バルト原生林が魔神に襲われてどうのこうのって冒険者が言ってはったで」
私はそれを聞いた瞬間、買い物籠と財布を地面に落としてしまった。そして、心臓が今にも破裂しそうなくらいバクバクと刻み始めた。
「あっいや、あくまで噂ね….噂….なんかの見間違いかも知れねえよ?それに、今あんたがこの街に居るってことはやっぱり・・・」
私は話を途中で切り上げて急いで村まで向かった。落としてしまった籠と財布、買い物後にご褒美に自分に買おうとしていたスイーツのことまでもどうでも良くなっていた。
ああ!!やっぱりこのお守りは村に置いていくべきだった!もしそうだったらこんなこと起こらなくて済んだかもしれないのに!!
私は頼むから嘘であってほしいと神々の朝である全王様にまだ祈りながら森を駆け抜けて村まで向かった。
「母さんーー!父さんーー!」
だが、そんな叫びも無意味になってしまっていたのである。村について目の前に広がるのはあまりにも地獄絵図だった。
あちこちに見るも無惨に殺された同胞の亡骸が、目に光を失って散らばっている。
私の思い出の家もよく遊んだ遊具も何もかも全て跡形もなく消え去っていたのであった。
私は立っていることができずにその場に倒れ込んでしまった。そして私は現実を受け入れられずに何度も嘔吐してしまった。
「嘘でしょーー!!!なんでこんな目にーー!!」
他のどんな神よりも争い事を好まず、自然豊かな森の中で動植物と協力しながら平穏に暮らしたいとそう願って来た為とくに抵抗する力もなす術もなく殺されてしまったのかと、想像するだけでまた胸が締め付けられる。
神の中には自分の持つ力を善意の為にではなくただ自分の利益や幸福を満たすためだけに行使するどうしようもない奴がいると聞いたことがある。
私たち森の神とは相反する存在である彼らは、魔神と言われいつの時代も神々と対立し平穏を脅かし続けている。
魔神….!!よくも….!!よくもこんなことを….!!どうしょうもない怒りが込み上げてくるが、私はもう限界であった。
家族も失い、住む場所も失い、思い出の場所も何もかも全て奪われてしまった。私はこの広い世界で孤立してしまったのだ。
もういいか….いいんだ….私もこのままあの世に召されて仕舞えばいいんだ。両親には怒られそうだけどもう私は自暴自棄になって自分のことなぞどうでもよくなってしまった。
私が膝をついて立ち上がれずにいると、突然誰かが後ろから私思い切り抱きしめて来たのであった。
耳だけでなく鼻も効く私はそれが誰なのか一瞬で理解した。
「セリーヌ….?」
「そうだよ…..お姉ちゃん….!」
この子は私が幼い時に森を流れる川に遊びに行った時にたまたま茂みの中で泣いているのを見つけた。どうやらこの川に迷い込んでしまったみたいだ。
それ以降、私はよくこの川を訪れるようになりその度、セリーヌは現れてくれて一緒に遊んでくれたのである。
私の妹であり、幼い時から今までを一緒に過ごした親友である。
「お姉ちゃん….死んじゃダメだよ….!!私がいるから!!」
完全に忘れてしまっていた。そうだ、まだ私は1人じゃないんだ。セリーヌがまだいる。
私がいなくなったら今度は本当にセリーヌが1人ぼっちになってしまう。またセリーヌを1人にするわけにはいかないな、姉として….
その想いだけが今の私を生きさせてくれた。私は精神的にも肉体的にも疲れてきってしまい、初めてセリーヌの膝枕で眠りに着いた。今までとは立場が逆になったのだ。
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そして私は明るい陽光に当たり、目を覚ました。この明るい太陽を初めて嫌に感じてしまった。
私の心は真っ黒だというのに、そんなに輝けている太陽が羨ましいのと今の私からしたらもっとドス黒い曇りぐらいがちょうどいいからである。
私はセリーヌの背中を軽く撫でると、ゆっくりと目を覚ました。
「おはよう、セリーヌ。朝だね」
「おはよう、お姉ちゃん….起き上がって大丈夫なの?」
「ううん。大丈夫じゃないよ….でも、みんなを弔わないといけないから寝てる場合じゃないよ」
私はそう言って力を振り絞って一族全員のお墓を作ることにした。それにいつまでも遺体を眺めていると本当に精神が壊れそうであった。
「お姉ちゃん、お墓作り私も手伝うよ。私も村のみんなに色々してもらったから他人事じゃないんだ」
そう言ってセリーヌは疲労困憊した私と一緒にお墓作りを手伝ってくれた。
つくづく私はいい妹を持ったものだ。そして、生きてくれていて嬉しい限りである。
私とセリーヌは遺体を埋葬した墓に向かって祈りを捧げた。これでみんなとは一生の別れである。
ああ、なんでこんなに悲しいんだろう…..死ぬのなんて当たり前のことだというのにいざ目の前で起こると涙が止まらなかった….
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
簡易ではあるが葬式が終わり、気持ちの整理がつくまで1週間近くかかってしまった。
最初は怒りよりも同胞を失った悲しみが強かったが今は違う。今はただただ一族全員の命を奪った奴らに対する憎悪の気持ちが込み上げてくる。
亡くなってしまった命はもう何が起ころうと帰って来ない。でも、家族を殺した奴らの命を奪うことならできる。
私は今ものうのうとこの世のどこかで悪びれる気持ちもなく生きながらえている魔神どもに激しい怒りと復讐の気持ちが沸き起こって来たのであった。
「セリーヌ、私は旅に出ようと思う。もしかしたら死ぬかもしれない。運よく拾った命をまたドブに捨ててしまうかもしれない復讐の旅さ。だからセリーヌとはここでお別れだ。今まで本当にありがとう。感謝してもしきれないよ…..」
私はセリーヌを危険な目に合わせたくない一心で、彼女を遠ざけようとした。しかし、彼女の覚悟もすでに決まっていたのであった。
「ダメ、お姉ちゃん!もう1人になろうとしないでよ!私はお姉ちゃんの妹なんだよ!いくなら私も連れて行って!お姉ちゃんに生きてて欲しいって言ったのは私!だから私にも責任があるわ!それに….私を1人にしないでよ….」
セリーヌは目に涙を浮かべながら立ち去ろうとする私を必死に呼び止めた。
ダメだ….私はまたセリーヌを1人ぼっちにさせてしまう所だった….
私は振り返って涙で顔をくしゃくしゃにしたセリーヌに言った。
「じゃあ、セリーヌには責任をとってもらうよ。私と一緒に冒険に出るっていう責任をね!」
「うん!」
私とセリーヌは顔に笑みを浮かべて再び2人で抱きしめあった。やっぱり心のどこかで、セリーヌと別れたくない自分がいたのであった。もう2度とセリーヌを離したくないし、離さないとここで私は己に誓った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして私たちは再び街へと出かけた。いつまでもこの森にいても何も起こらない。
今はとにかく情報を集める。一体どんな魔神が私たちの森を襲ったのかを調べる為に….
こうして私たちは長い長い冒険に出かけるのであった。ハプニングにあったり、仲間ができたり、英雄みたいに扱われたり、強敵と出会って打ちのめされたりと様々である。
この物語は森の神である私、エルフリーデが幼馴染であり川の神であるセリーヌと共に魔神への復讐の冒険へと向かう物語である。
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長編でも書いていて、どれくらい反応があるのか試したかったので短編でも書いてみました。反応が良かったら頑張って長編の方でも頑張って作るので応援していて下さい。
(最終回までストーリーは決まってます)
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