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剣と魔法④


 リンドとルースの立ち会い稽古の翌日、


 リンドはその日もカリナの座学を受けていたが

 その日はいつもとは違い、

 カリナの尋問から始まっていた。


「一体何処で内魔法を覚えたのですか」


 いつ、どこで、だれに、なぜ、と

 徹底的に詰められたリンドは洗いざらい話してしまう


「あの……書庫の建国記に『会鳴烈身流』の記載があって……」


 建国記とは、

 300年程前ヴァルハルト王国の建国を行った『剣王』ジルグの手記をまとめたものであり、


 その中の1つの章に打倒した流派の剣士の事が細かく書き記されていた。

 リンドは、『剣王』ジルグの精密な分析と几帳面なまでの描写で基礎を習得することが出来たのである



「なるほど建国記ですか……確かに読まれてましたね」



 カリナの頭の中には

 その事が抜けていたようで

 素直に感心したように見える


「しかしそれとこれとは別です」



 その言葉で

 ホッとしたのも束の間、再び地獄に突き落とされる


「だけどカリナ!早い人なら俺くらいの歳でもう内魔法の鍛錬を受けてるって聞くよ!」


 

 この国の兵士は顔役こそ貴族階級の者が多いが

 一般の兵士などは12にもなると訓練校に入校し

 外魔法、内魔法の訓練を受けている


 リンドの最もな主張にカリナも最もな答えで返す


「殿下は王族です、長く国を治めるためには若くより魔導管を損耗させるわけにはいかないのです」



 王族なので長く健康でいなければならない

 というのは、最もな話であった。


 しかし、

 リンドにも言い分がある


「どうせ王位はアイッ……兄上が継ぐんだから良いじゃん!」



 リンドには母であるシルヴィア・ヴァルハルトの元での姉と兄が一人ずつ

 継母であるミリーナ・ヴァルハルトの元に生まれた弟と妹がいる


 そして生まれた時に母を殺したとして

 忌み子と言われた時期もあったが、

 

 その話を流したのが実の兄である

 レオ・ヴァルハルトであった。



「あのクソ野郎がほぼ王位を継ぐから俺は早めに王宮を脱出したいんだ!」



 この王宮で産まれ

 前世の意識が上手く身体に馴染んできたからこそ察する事がリンドには出来た。



あの兄は王位の為なら俺を殺す……



 前世での歴史の知識と今世の経験で

 王位継承争いに巻き込まれるとロクなことにならないという確信があった


「……王宮は暮らし辛いですか?」



 カリナは同情の表情を浮かべる

 リンドを取り巻く家族の確執に対してはカリナも思うところがあった。


 幼い頃から実の両親の代わりに乳母と共に

 面倒を見てきた情もある


 しかし同時に現王アレクに対する信頼もあった。



 近頃ますます聡明になり

 周りの意図を読み取る能力は成人に引けを取らない

 アレクならば王位を正しい者に譲るであろうという信頼だ



「王宮は嫌いってほどではないけど……カリナやルース師匠もいるしさ……」



 そこでカリナは思い直す

 リンドに信頼されていることが素直に嬉しかったこともあるが、

 リンドには同年代の信頼出来る臣下がいないということに



 今すぐというわけにはいかないが

 それまで気を紛らわすには内魔法に打ち込むのも悪くは無いのではと



「わかりました、ただし必ずルース殿の指示通り魔法を習得する事!良いですか?」



 その言葉を聞いたリンドは

 笑顔で立ち上がり


「ありがとうカリナ!わかってくれると思った!」


 

 じゃあ行ってくる!と言い

 木剣を持つリンドを制止し



「いいえ殿下、午前は座学に御座います」



 その言葉を聞き

 

「うげぇ〜」


 リンドはたいそう嫌そうな声を出す






 


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