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剣と魔法③

 


 リンドとルースの立ち会い稽古が終わり

 捌けて行く屈強な『キャッスルガード』を見つめる男が居た


 彼のいる場所は訓練場を見下ろせる所にあり

 この王宮の北宮に当たり、

 王の寝室のある正寝から『賢人会』と呼ばれるこの国の6大諸侯が、

 内外の出来事について話し合う会議室へと向かう途中にある


 

 男は表情一つ崩さず

 運ばれていくリンドを見ている


 その姿は

 実際の年齢より年老いて見られそうなほど

 やつれており

 不健康そうなクマが目の下にくっきりと出ている


 そしてその髪は白髪が混ざり始めているとはいえ、

 リンドと同じ黒髪であった。



「リンド殿下が気になりますかな?」



 近付いてくる足音と共にローブを纏ったカリナ・アースリーが話しかける

 声に気がついた男は軽く目配せをし再び訓練場に視線を戻す


「カリナか……」


 カリナが男に数歩まで近づき

 頭を深く下げ


「はい、陛下」


と言う

 

 この男こそこのヴァルハルト王国の現国王にして

 リンドの父でもある

 アレク・ヴァルハルトだ


「どうだ……リンドの様子は」


 目を向けることもなくカリナにアレクが問いかける

 あいも変わらず表情を崩さない


「算術などの理解は異常に早いですな、家名など記憶を必要とするものは難儀しているようですが」


 そうか……

 と静かに返すだけでそれ以上の事はアレクは尋ねない

 しかし、カリナは続けて言う


「最近は魔法にご執心のようですが成人まではと釘を刺しておりましたが……どうやら無駄だったようですな」



 そうか……


 アレクはまたも静かに返すだけだった


 少しの沈黙の後、

 アレクの方から口を開く


「お主、養子を取ったらしいな?優秀と聞く」


 はい陛下と返した後


「若い才能は眩いものです、見れば輝いて見えますが、長く見ていると我々年老いた身には眩さゆえに目を背けたくなるときがあります」


 カリナの遠回しな意見に、

 心意を汲み取ったアレクは自嘲的に



「世では『賢王』と呼ばれている余が息子から目を背けているのは情けないとおもうか?」


 

 アレクはリンドが生まれる際

 母親が死んだせいでリンドと距離を取っていた

 リンドの顔を見ると母親を思い出してしまうからだ



「陛下……世継ぎの問題も御座いますリンド殿下とお話なさいませ」


 するとそこへ

 また一人男が近付いてくる


 首元までしっかりと閉めた長身の男が

 柄入りの高級そうなマントをなびかせ


 作り笑いが印象的な顔で2人に語りかける



「今、お世継ぎがどうとお話されていたようですが?」


 2人に作り笑いで目配せをする


「陛下……それに“元”相談役のカリナ・アースリー殿」

 

 アレクは軽く手をあげ挨拶の代わりとし、

 カリナは頭を下げその男に挨拶をする


「これはハンフリー・ウィンディア公」


 不適な笑みを浮かべハンフリーは話出す


「お気をつけなさいませカリナ殿、宮中は至る所に耳があります。ましてやお世継ぎの事と成りますと宮中がざわつきます。」


 しかしこの挑発とも取れる言葉に

 カリナは動じること無く淡々と返す。



「ご忠告痛み入ります」


 

 カリナは“元”王の相談役というか立場ではあったものの、

 元々は落ち目の貴族出身であり

 このハンフリー・ウィンディアはこの国の6大諸侯の一角である。


 なので、カリナのこの対応はこの貴族社会ではやむを得ない対応ということになる



「しかしカリナ殿の養女は優秀な外魔法の才能があると聞きます、伝統あるアースリー家の再興も目前ですかな?」


 


 ハンフリーが情報をひけらかす、

 牽制とも取れる言葉に、カリナが答える




「家も身体も老いた身には若者の成長だけが、生きる幸せですのでそのような願望はございません」



「もうよい!カリナ下がって良いぞ」


 

 見かねたアレクが口を挟み

 二人のやり取りは中断される

 

 カリナがアレクとハンフリーに頭を下げ、

 振り返り移行としたところで


「リンドを頼んだぞ……」


 と静かにアレクが囁いた。





 カリナが去った後、間を置かずに

 黒い服に身を包んだ瘦せこけた男がアレクとハンフリーのもとへやってくる




「皆様お揃いでございます、陛下」




うむ……



 そういうとアレクは『賢人会』の行われる

 部屋へと向かって歩き始める


 アレクの足は重く

 国王であろうとこの会では気が休まらない


 

 いや国王であるが故に、なおのこと




 何故ならここに集まる6大諸侯、王妃、商人組合

 そのどれもがハンフリーと並び立つ腹黒さと狡猾さを持ち

 

 


 常に権力を追い求めているからである









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