↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
8/476

8,

「……首都の『指定修繕師(スペシファイ・リペアラー)』が、あんなに若いとは思いませんでした」


 瀬戸がちらりと『遺物境界線(レリックボーダー)』を振り返って呟く。

 ニ人が境界線基地(ボーダー・ベース)からでてくる頃には、空は夕焼けに染まっていた。


「私も驚いた。――まさか、あんな小娘だったとは……」


 阿久津もうなずく。

 意外ではあったが、あの的場がわざわざ手紙を出して彼女に頼んだのだ。

 おまけに触れただけで死をもたらすアーティファクトを前にしても、冷静そのものだった……


 ――優秀では、あるんだろうな……


 最後にもう一度『遺物境界線(レリックボーダー)』を見つめて、ニ人のセナトスは中枢区(ヌークリアス)へと足を向けた。



<><><>



「……もう、出てきてもいいですよ」


 窓から赤く染まった夕暮れの光が差し込む。その光に包み込まれて、天音はそう机の上の客(・)人(・)に声をかけた。

 タリスマンはびくともしない。普通はそれが正しい反応であるのだろうが、天音は机に近づいて腕を組んだ。


「何が嫌なのか知りませんが、元老院(セナトス)のあの二人は帰っていきました。……いい加減、“現身(うつしみ)”を見せて、お話を聞かせてもらえませんか?」


 呆れたような天音の言葉が、部屋に響く。一瞬、あたりに沈黙が舞い降りた。



『はあ……』



 ――と、ため息のような音が聞こえ、天音は顔を上げる。


 ひらり。ローテーブルの奥で、黒い布が風もないのに翻る。天音の視線の先には――背の高い、黒いマントを羽織った人物が立っていた。


 フードを目深に被り、その顔を見ることは出来ないが……フードから出た首元、ちょうど右の鎖骨の上辺りに、あの精霊護符(タリスマン)が皮膚に埋め込まれるような形でついている。天音は腕をおろして、じっとその人物を見つめた。


「何故……?」


 フードからわずかに覗く唇が、そんな言葉を紡ぎ出す。低く凪いだ男の声だった。


「ここまで精巧に作られた人工遺物(アーティファクト)が、現身を持っていないわけ無いので。……人間の形をしているかどうかは、私の勘ですが」


 天音の言葉に、フードの人物はまた息を吐き出すと、彼女に正面から向き合うように体の向きを変える。



「私は『修繕師(リペアラー)』の巫剣 天音といいます。――あなたの名前は?」



 天音の問いに、男は少し黙り込んだ後、被っていたフードを後ろに払った。

 目にかかるほど長い黒色の髪。すっと通った鼻筋に、薄い唇。眉目秀麗という言葉が似合うであろう、二十歳くらいの青年だった。


 その目は自身の“本体”と同じ、深い紅色(あかいろ)をしている。



「……“イツキ”と呼ばれている。さっき話していたとおり、『Ⅲ型』――プロテクション・タイプのアーティファクトだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。