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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
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76,

「一応、僕も『Ⅰ型』アーティファクトだ。――それに、アレ相手なら遠距離武器のほうが有効だろ」


「うっわ……、飛び道具はずるいぞ」


 ローレンスの“本体”に、アズマは苦い顔をする。しかしそれに構うこともなく、ローレンスはライフルを構えた。


「早く行けよゲンジ。相手はたかだか百体だ、負けたら承知しない。……ゲンジなら余裕だろ?」


「っ……」


 ちらりと緑色の目がゲンジを見上げる。挑発と――微かに絶対的な信頼が滲むその視線に、ゲンジは若干強張った笑顔で応じる。


「そっちこそ、死んだら承知しね―ぞ」


「当たり前だ」


 ローレンスの微かな微笑みに、ゲンジは周りの“兵器”たちを見回す。


「お前ら行くぞっ」


「「了解!」」



 去っていくゲンジたちには目もくれずに、ローレンスはアズマを見つめ続ける。彼がコッキングハンドルを引いて引き金(トリガー)に指をかけたのを見て、アズマははあっとため息をつく。


「うぇ〜、だる……」


「それはこっちの台詞だ」


 それだけ言うとローレンスは躊躇なく引き金を引く。



『ターンッ――!!』



 けたたましい銃声が響いた。しかし……


「あっぶな……!突然撃たないでよ」


「……そうだろうと思った」


 気がつけば木の上には何もおらず、代わりにローレンスの後ろから声が聞こえた。

 振り返ると、アズマが別の木の上で尻尾をぶわりと膨らませている。ローレンスは銃を構え直した。


「ちょこまかすんな」


「んな無茶なぁ……っ!」


 すぐにローレンスが銃を連射したはずみで、アズマはまた木から木へと飛び移る。


「はあっ。ダメ、逃げないと」


「待て、」


 反撃の手札がないアズマは、自分の劣勢を悟るやいなや木を伝って逃げ出す。ぴょんぴょん跳ねながら林を奥へ奥へと進んでいくアズマを追って、ローレンスは草むらの中を駆け出した。



『ガコッ……カチッ、』


 スピードを緩めずに再装填リロードして銃を撃ち続ける。ぐんぐんと視線の端を森の木々が過ぎ去っていく。障害物を縫いながらも正確に獲物を捉えたローレンスの弾はアズマの体を掠めるが――アズマは小さな体とすばしこさを活かしてその弾幕をすり抜けて走り去る。


「チッ……」


 舌打ちをうってローレンスはアズマを追い続けた。



 結局、そのまま林を北側に抜けた。見慣れた荒野が目の前に横たわる。


 ――ゲンジたちからそう離れていないな……


 微かに聞こえた戦闘音に、ローレンスは目を上げる。



「っ!やっば……」


 障害物がなくなったせいで逃げるすべを失ったアズマは、咄嗟に真上に跳び上がる。

 ――しかし、その動きはローレンスにとって好機にしかならない。


「じゃあな。クソ猫」


 ローレンスはマガジンに残った最後の一発を放つ。


『ターンッ――!!』


 最初と同じ鋭い音。――しかし、それはアズマの胴を真っ直ぐに貫いた。



「うぐっ――!?」



 アズマの緑色の目が大きく見開かれる。

 ひらりと宙を舞ったその小さな体は、パタリと地面に落ちるとそのまま動かなくなった。


「――ふぅ。やった」


 ローレンスは再び銃をリロードしアズマを見る。念の為死体にもう一撃入れてから、ローレンスはアズマに近づいた。アズマの死体に手を伸ばす。

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