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――時はほんの少し遡る
「……まーじでここまで追っかけて来たの?しつこい」
第三通用口の外。ボーダー外にしては珍しく、高い樹木がひしめきあい小さな林を形成しているエリア。
その中でもとびきり高い木の上から、アズマはカイトと揃いの緑色の目で下を見下ろす。
「逃してたまるかってんだ!」
彼の視線の先――木の下からゲンジが叫ぶ。木の周りを彼の指示で“兵器”たちが取り囲んだ。
「ウザ……」
「観念しろっ、化け猫!このままだとどのみち、お前に選べる道は無いぞ」
ゲンジの言葉に、アズマはフンッ!と鼻を鳴らす。
「誰が化け猫っ……。いや。じゃあ、化け猫は化け猫らしく振る舞いますか」
しかし、アズマはまたすぐにニチャアっとした笑みを浮かべ、目を細める。
その時、斥候として放っていた数人の“兵器”が戻ってきてゲンジに向かって叫ぶ。
「将軍!北側からアーティファクトの軍勢が迫っていますっ」
「っ……。ったく面倒な、」
ゲンジの焦燥の滲んだ声に、アズマはクスクスと笑った。
「どぉ?僕たちからのプレゼント!」
耳をピクリと動かし満足そうに目を細める彼を、ゲンジはぐっと睨め上げる。
「てめっ、」
「しょーがないじゃん!キミたちがボクの言うことを聞かないのがいけないのっ」
そう言うとアズマは木のてっぺんで背筋を伸ばす。陽の光に艷やかな黒色の毛が淡い光を放つ。
「こちらの軍は百。キミたちは五十――、あ、二手に分かれてるから実際は三十もいないのか」
にやけた顔をそのままにアズマは“兵器”たちを見下ろす。その目の凄みに、“兵器”たちはただ彼を見つめた。
「さあ、どうする?――ボクは優しいから先に言っておくけど。ボクから目を離したら……どうなるかなぁ」
「……っ」
ゲンジは歯を食いしばる。敵軍を優先するか目の前にいる猫を優先するか。――たかだか猫一匹に翻弄されるのは気に食わない。背中の両刃斧に手をかけて一歩前に踏み出そうとした。
――しかし
「ゲンジは他のメンバーを連れて敵軍を迎え撃ってください。――このクソ猫は僕が相手します」
「――ロー、レン……?」
そんな彼を止めて一歩前に出たのはローレンスだった。彼もまた背中に下げられている自分の“本体”に手をかける。
「待てローレン。たかが猫一匹だからって、」
「は?僕のこと舐めてるのか?」
いきなり語調を崩したと思ったら、ローレンスはじろりとゲンジを横目で見上げる。口を噤んだゲンジから目をそらすと、ローレンスは自分の“本体”――旧式の突撃銃を体の前面にまわす。
そういえば
ローレンの人物紹介の時にうっかり本体の話をしてしまっていたような……。
まあ、いいか