表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
63/476

63,

 ――そんなローレンスのさらに後ろで、アキラは再びキャラバンの男に話しかける。


「でもすごいっすね、今のアンドロイドって。俺たちよりもずっとメカメカしいや」


「むしろ、皆さんみたいに人間らしく作る技術がないんです」


 男は弱々しく笑う。


「なにせ、もう百年も前に失われた技術ですから。単純な作業とか人間のアシストとか、今の人間が一から作ることができるのはそんなモノばかりです。感情も、単純なものしか組み込まれていないし」


「んー、そうなんすか。――でも、」


 アキラは天音が解体しているアンドロイドを眺める。その表情は、角度的に男からはよく見えなかった。


「そのほうが、いいのかな。――俺たちみたいに戦うしか能がないんじゃなくって、もっと人の役に立てる」


「……」


 男は言葉を掛けることができない。しかし、アキラはすぐにニカッと笑って男を振り返る。


「なーんて!まあ、新しいものがいいのは当たり前っすよ。俺たちなんて、ちょっとした傷も直してもらうのが大変で。古い型番だとほら、予備パーツとか技術とか無いと」


 そう言ってアキラは、肩をすくめた。


「いいな〜。アーティファクトは替えがきくなんてよく言われるけど、今のああいう機械のほうがもっと永く働けるんだろうなぁ」



「――パーツ、?」



 不意に、アキラと男の会話が止まる。天音が声を上げたからだ。ロビーがしんと静まり返った。


「――外からのハックは、暴走させることしかできない。でも、内側に潜り込んだら……?」


 そう呟くやいなや、天音は勢いよくアーミーナイフを動かす。いつも以上に荒さが目立つその手つきは、しかしすぐに止まった。


「――イツキさん、」


 天音は、何故かイツキの名を呼んだ。ロビーの隅にひっそりと立って一部始終を眺めていたイツキは、彼女の声に歩み寄ってくる。


「なんだ」


「……」


 天音は、黙ったまま膝立ちになってイツキのマントの裾を引っ張る。それにつられて、彼は天音と同じようにアンドロイドの横にしゃがんだ。


「これ、見覚えとか……ありませんか?」


「――え、」


 アンドロイドの腹部――ちょうど別のパーツに隠れて見えなかった部分を指さして、天音はイツキを見上げる。彼女の手元を覗き込んで、イツキは目を丸くした。


「どうして、そう思った……?」


「これ、北方軍製のものです」



 ――天音が指さしていたのは、小さなねじ巻きだった。


 黒い金属でできたそれは、頭の部分に細かい装飾がされていて……所々に緑色の宝石が嵌められているのが見える。


「現在の金属部品に使われているのは、およそ九割が《セイレント鉱》です。――今でこそ、“首都”は世界最大の《セイレント鉱》の産地ですが、“大戦”当時は南方軍側の領土であった《南シレア山脈》の特産品でした。だから……、これみたいな黒鉄製の部品は、“大戦”以前の北方軍でしか作られていません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ