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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
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59,

「――あいつら、終わったな。腕の一本や二本、失くなっても不思議じゃない」


「ローレンスさんのお説教で修繕リペアとか……。ほんとにありそうで洒落になりませんね」


 ローレンスに連れて行かれる“兵器”たちの列を眺めながら、天音とイツキはヒソヒソと会話する。


「お前が死ななかったことだけが、あいつらにとって唯一の幸運だろうな」


 イツキはそう言ってため息をつく。

 と、不意に天音が顔を上げた。


「――そういえば。ローレンスさんが言っていた“お客様”って……?」



「僕のことかな」



 突然後ろから声がして、天音はびっくりして振り返る。


「ま、的場さん?」


「やあ。――ものすごく、愉快な事になっているね」


 そこにいたのは、普段首都中枢塔の最上階以外ではまず見かけることのない人物――的場 茜だった。

 唖然とする天音に、的場はイタズラが成功した子供のようにくすくすと笑う。


「ふふ、驚きすぎだね。女史」


「え、な、なんでここに?」


 天音の言葉に、的場は不満そうな顔をする。


「だって……女史、一週間経ってもこの前の件の釈明をしに来ないんだもん」


 流石にこれ以上は待てなかった。と、的場は不機嫌に眉を寄せる。天音はぐっと言葉に詰まった。


「――すみません。忘れてました」


「ははっ。そーだと思った」


 的場はしゅんとなった天音を見て、また笑う。


「まあ、そんなことは実質建前で、本当は久しぶりにベース(ここ)に来たかっただけなんだけど」


「……」


 へらりと笑う的場を、天音はキッと睨みつける。


「――ウザっ、」


「辛辣だなぁ」


 くすくすと笑いが止まらない的場に、天音は呆れながら尋ねる。


「大元帥ともあろう方が――まさかひとりで来たわけじゃないでしょうね」


 天音の脳裏に、元老院セナトスの阿久津の顔が浮かぶ。勝手に出かけているとすれば、この前の天音のように怒られるのは確定だ。


「もちろん。みんなに心配はかけたくないからね」


 そう言って的場は少し辺りを見回して、苦笑いする。


「セナトスのひとりのヨシュアと一緒に来てるんだけど……やっぱり、君と顔を合わせるとなると気まずいみたい。どっか行っちゃった」


「ヨシュア……?」


 聞き覚えのない名前に、天音は首を傾げる。的場は少し逡巡した後、首を横にふった。


「いいや。こっちの話」


 そう言うと、的場はまた天音を見る。


「それよりも、せっかくだから例の件について聞いてもいい?」


「うっ……」


 天音はあからさまに嫌そうな顔をする。ちらりと後ろに立っているイツキを振り返るが、無反応な彼に天音はため息をついて、渋々的場を見上げた。



「――工房で」

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