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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
55/476

55,

「――あなたはアーティファクトだからいいかもしれませんけどっ、私は人間ですからね!あんなとこから落ちたら死んじゃいますから、」


「うるさいぞ修繕師。黙ってろ」



「……なんだぁ、アレ」


 ――カイトとアズマの()()を、奇妙な二人組が通り過ぎていく。

 白い髪を揺らす華奢な女を、黒ずくめの男が抱えて家々の屋根の上を、ボーダー方向に走っていく。わけのわからない構図だが、カイトはその男の方に見覚えがあった。


「あいつは――」


 脳裏に、かつて北方軍で『死神』と呼ばれた“戦友”の紅い目が浮かぶ。


「あの女、昨日の奇妙な客じゃないか?」


 呆けるカイトは、アズマの言葉に現実に引き戻される。


「……マジ?」


「マジマジ。ボクの目を疑わないでほしいな」


 いつものように得意げにニチャアと笑うアズマ。カイトは何かを思案するように顎に手を当てる。



「ふーん……。アズマ、大当たりかも」


「何がぁ?」


 ぐうっと伸びをしながら、アズマは間延びした声で返事をする。カイトはニヤリと笑った。


「昨日の奇妙なお客は、どうやら君の読みどおり嘘をついていたみたいだね」


「ほお?」


 ――彼女がつけていた紅い宝石の精霊護符タリスマン。“首都”で修繕師リペアラーと呼ばれる人間は、たったのひとりだけ……


「僕たちは――目的のものを見つけられたみたいだ」


 細められた緑色の目に、妖しい光が灯る。

 乾燥した“壁外”の街に、一陣の風が吹いた。



<><><>



「――すんごい、怒られた」


「当たり前だ」


 『遺物境界線レリックボーダー』外周。

 むくれた顔をして歩く天音の隣で、イツキはため息をつく。


 ――つい三十分ほど前に急いで帰ってきたが、敵の数が少なかったこともあって、もうとっくに戦闘は終わっていた。

 代わりに、鬼のような形相で待っていたローレンスにポリティクス・ツリーに行っていたことを説明することになり――イツキもろとも、こってりと絞られることになったが。


「怖かった……」


ローレンス(あいつ)、あんな大声出るのな」


 イツキがその時の状況を思い出して遠い目をして呟く。疲れたようにため息をついた天音はいつものように、地面のそこかしこに転がっている“死体”の横にしゃがみ込む。


「……最新機種ですね」


 ボロ布のように投げ出されたそれは、見た目だけならよくある『Ⅰ型』のアーティファクトだった。虚ろに見開かれたガラス玉の目を、天音は覗き込む。


「『再構築製造機リサイクラー』がつくったやつじゃないのか」


「ええ――」


 それに。と天音は死体の上着を脱がせる。


「かなり性能の良い隠蔽ハイディング能力が付与されています」


 彼女は、上着をイツキに差し出す。訝しそうに彼がそれを受け取った瞬間――


「!?」


 その上着は消滅し、後には僅かに灰だけが残った。


「――と、いうことは、」


「はい。それ自体がアーティファクトなんです」


 イツキは手に残った灰を眺める。天音は立ち上がった。

カイト(製造は第一次機械戦争中)


種族:アーティファクト(Ⅲ型)

プロテクション:《深層の証言ディープ・テスティモニィ》瞳を見た者の深層心理を引き出す能力。


かつてプロテクションを使って北方軍で諜報員をしていたアーティファクト。外部のアーティファクトとして、“首都”壊滅のために暗躍している。



アズマ


種族:アーティファクト(Ⅱ型)


カイトと行動をともにする、猫の現身を持ったアーティファクト。しかし、その正体は……

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