表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
54/476

54,

「アーティファクトの軍勢が現れました!速やかな退避をお願いしますっ」


 “壁外”地区の西側。“首都”最大の商隊市場マーケットに、大声が飛び交う。

 理由は明白。首都中枢塔から派遣された役人たちが、市民の避難を開始していた。


 そんな喧騒の中、ひとりだけ逃げもせずに旅商隊キャラバンの装甲車の陰でのんびりと煙管をくゆらせている男がいる。


「随分派手に出たね。カイトらしくないや」


 彼の足元で惰眠をむさぼっていたアズマが、のそりと起き上がる。その言葉に、この襲撃を引き起こした張本人であるカイトは苦笑した。


「そうだね。でも、敵の手のうちは見ておきたいじゃん?」


 ほら来た。と、カイトは『遺物境界線レリックボーダー』の方を見る。大勢の“兵器”たちが右往左往しているのが見える。


「――あれ?戦いに行かないのかなぁ」


()()()()んじゃない。あれは、()()()()んだ」


 アズマが首を傾げると、カイトは笑う。愉快そうな笑みだった。


「あのマザーも、“兵器”たちも、敵の位置が補足できないんだな。――へえ、案外弱いところがある、と」


 カイトは目を細める。アズマは、ふぅん。と鼻を鳴らすと“兵器”たちの様子を目で追う。


「となると、先にあのボーダーにボクたちの軍勢が着くかな」


「まあ、そうなるだろう、……」


 しかし、カイトはふとボーダーを見つめると、言葉を切る。


「?――どうしたの、」


 アズマもボーダーを見つめて――すぐにカイトが何故黙ったのかを悟った。


 ――“兵器”たちの混乱が……なくなった?


 アズマは大きな目を更に見開く。ボーダーのそこかしこにいた“兵器”たちは気がつくと姿を消し、僅かに残った者たちも皆、こことは反対側――南東の方向に走り去っていく。


「見つけたってこと、か……?」


 カイトが唖然と呟く。その声にアズマは彼を見上げた。


「――遠隔じゃ見つけられないってだけで、見つけることが不可能ってわけじゃないだろ?」


「そうだが――いくらなんでも早すぎる。マザーには見つかると思っていたが、目視で見つかるかも怪しいステルス性の高い特殊部隊を送り込んだんだ。……そう簡単に見つかるわけが無い、はず」


 眉根を寄せるカイトに、アズマはパチパチと瞬きをする。


「そーなると、“兵器”がボクたちの知らない観測機器でも持ってるのか?――でも、ここまで高精度な索敵エネミーサーチを搭載した装置なんて、現代いまじゃもうつくれないよなぁ」


索敵エネミーサーチ……」


 この言葉に、カイトはある一つの可能性を思いつく。しかし、それを口に出す前に――


「ん?なんだぁ」


 “兵器”たちの動きを探るために感度を最大まで上げていた耳が、微かな物音と声を捉える。アズマがキョロキョロとあたりを見回して――その視線は頭上で止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ