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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
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5,

あけましておめでとうございます!

元旦から投稿させていただきます。ぜひ、今年も秋斗の小説をよろしくおねがいします。

 ――戦線歴2120年 4月10日




「……ここが、“境界線基地ボーダー・ベース”ですか」


 阿久津の隣を歩く瀬戸が、感嘆した声を上げた。


「そうか。瀬戸は、“ベース”に来るのは初めてか」


 阿久津は瀬戸に微笑みかける。瀬戸は阿久津を見上げ、うなずいた。


「はい!……元老院セナトスになってからはずっと、ポリティクス・ツリーで仕事をしていましたから」


 『遺物境界線レリックボーダー』の足元を歩きながら、阿久津は上を見上げる。高くそびえ立つ壁の上でも下でも、“兵器”たちが忙しなく働いている。


「……阿久津さん、」


 不意に瀬戸が阿久津を呼ぶ。


「どうした?」


「あの……本当に、その“精霊護符タリスマン”は危険なものなんですか……?」


 瀬戸は阿久津が両腕に抱えている木の箱を一瞥する。阿久津は、軽くその箱を持ち上げてみせた。

 四角い、細工物の古い木箱。ポリティクス・ツリーを出てくるときに、的場によって鍵はもうすでに開けてある。


「さっき見た感じ、ただのアクセサリーにしか見えなかったんですけど……」


「まあ、見た目はたしかに無害そうだが……これは『Ⅲ型』のアーティファクトだ」


 阿久津の言葉に、瀬戸は首をかしげた。


「『Ⅲ型』?」


 阿久津は呆れたように、瀬戸を見る。


「お前……。セナトスになるときに学ばなかったのか?」


「えへへ……。なんとなくは覚えてるんですけど。――何でしたっけ?」


 頭の後ろに手を当てて笑う瀬戸に、阿久津はため息をつく。


「全く……。いいか。アーティファクトはざっくり分けると三種類ある。

『Ⅰ型』は主に武器の形をしたアーティファクトの総称だ。『Ⅱ型』と呼ばれるアーティファクトはそれ以外の形。古い骨董品が多いから『骨董遺物アンティーク』とも呼ばれるな……」


 そして。と、阿久津は瀬戸を見る。


「『Ⅲ型』は“精霊の加護(プロテクション)”と呼ばれる特殊な能力が付与されている。形もサイズも様々。多くが大昔に作られたものだと言うが」


「……では、このタリスマンにはどんな能力が?」


 瀬戸が尋ねると、阿久津は首を振った。


「私も詳しいことは知らない。……ただ、あのポリティクス・ツリーの格納庫に“封印”されていた代物だ。すごく――危険なものではあるんだろうな」


 阿久津の答えに、瀬戸は少し不安そうな顔で木箱を見つめる。

 木箱の蝶番ちょうつがいに、陽の光が反射した。



<><><>



「あれ……どっちだ?」


 『遺物境界線レリックボーダー』の中に入ると、ベースの構造はより複雑さを増す。阿久津も瀬戸も、始めて来た場所なので、あっという間に道に迷ってしまった。阿久津は困り果てて首の後ろを掻く。


「……狭いですね」


 瀬戸が、ガヤガヤと騒がしく話しながら横を通り過ぎていく“兵器”たちに、ビクつきながら呟く。


「“兵器”、苦手なのか……?」


 阿久津が尋ねると、瀬戸はそっとうなずく。


「駄目だとは思ってるんですけど……あそこまで僕たちにそっくりで、でも人間じゃ無いっていうのがちょっと……」


 怖いっていうか。と瀬戸は頬を掻いた。阿久津は納得したように、無言でうなずく。


「……だが、この感じだともう、誰かに道を聞かないと分からないな」


 途方に暮れた阿久津が、そう呟いたちょうどその時、



「あれ……。もしかして、セナトスの人っすか?」



 ニ人の目の前から声が聞こえた。

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