表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
36/476

36,

「――そういうことか」


「なんですか?放してください」


 天音は横目でイツキを見上げる。無機質な紅い瞳と目があった。


「今春のキャラバンには、アーティファクトでも紛れ込んでるのか?」


「……また、カマかけですか?」


「いや。これはあっている自信がある」


 イツキの言葉に、天音は必死になって動揺を隠す。しかし、イツキは言葉を続けた。


「“首都”外部からやってくる旅商隊に、アーティファクト。おまけに“兵器”を関わらせたくないとなると――自然と答えが見える」


 淡々としたイツキの言葉に、天音はただ彼を見上げることしか出来ない。


「アーティファクトを壊せるのは、アーティファクトだけ。……裏を返せば、俺たち“兵器”を傷つけられるのも、アーティファクトだけ。――お前が俺たちを関わらせたくないのは、この件にアーティファクトが直接関わってくるからだ」


 例えば、キャラバンに紛れ込んでいる。とかな。


「っ。――はあ、」


 天音はため息をつく。


「――あなたは、エスパーか何かですか?」


「いや。どこかの修繕師様が、びっくりするほど分かりやすいだけだ」


 薄ら笑いを浮かべるイツキを見上げ、天音は諦めたように目を瞑る。


「……そうです。あなたが言ったこと、全部正解ですよ」


 天音は投げやりに呟く。イツキは彼女から手を離した。


「どんな奴か、目星はついているのか?」


「大元帥から大体の情報はもらいました」


 いつも身につけているウエストポーチから、天音はあの封筒を取り出す。イツキはその中身をざっと眺めて呟く。


「機械系の店か。別に珍しくは無いな」


「はい。――だから、どれがそうかはまだ」


 返された封筒を仕舞いながら、天音が呟く。その言葉に、イツキは彼女を横目で見た。


「――なら、俺を連れて行くのが正解だな」


「何故ですか?」


 訝しげに目を細める天音に、イツキはまた少し笑って見せる。



「“首都”に侵入したアーティファクトは、十中八九“旧型機”だ」



「――え?」


 天音は目を丸くする。


「“大戦”以降に製造されたアーティファクトが人間に紛れ込んだところで、“首都”に入った瞬間、すぐにボロが出て見つかるのがオチだ。でも、“旧型機”の構造は、人間とさして変わりはない。――まあ、それはお前が一番分かっていると思うが」


 イツキはここで少し言葉を切る。天音は黙ったまま、彼の言葉の続きを待った。


「政府の連中、まして『遺物境界線レリックボーダー』の関門で見つけられないってことは、“旧型機”である可能性が高い。――むしろ、ほぼ確実に“旧型機”だ」


「でも、それとあなたを連れて行くことに何の関係が?」


「こう見えて、俺も“旧型機”だ」


 イツキは天音を見て、淡々と説明する。


「“大戦”中に生き残っていた“旧型機”も、そもそも総数が少なかったんだ。しかも、俺も含めて当時の“旧型機”は、ほとんど《アスピトロ公国》――かつての、北方軍側の最大都市の軍部に配置されていた」


「――あ、」


 天音が、なにかに気づいたように目を開ける。


「そう。……“旧型機”だったら、顔見ればわかるんだよな。ほぼ全員、顔見知りだから」


 イツキはニヤリと微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ