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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Prequel<B>,『セピアの過去』
339/476

339,

 2020/12/3 <log>


『……以上、『世界永久停戦条約』の締結をもって戦争の終了を宣言する』


「――終わったな」

「こんな、ラジオで流した一言で……本当に戦争が終わるのかぁ?」

「条約が法的に拘束力を持つものだから、これ以降戦ってるような奴らはみんな処罰対象になるんっすよ。ちなみに、アーティファクトなら即刻廃棄処分です」

「ほほう?」

「詳しいなぁ、アキラ」

「へへっ」

 ――って、イツキが言ってたことをそのまま言ってみただけなんだがな


『ついに、《帝州》総皇司・春氏の宣言で戦争が終了を迎えましたね』

『二十年ですか。僕が子供の頃から続いていた戦争でしたが……長かったですね』

『はい。現在、この二十年の総被害を政府が調査している段階なんですが――現在の世界の総人口は、開戦当時のおよそ半分ほどまで減ったのではないか、という試算もでています』

『そうなんですか?』

『有識者の話では、普段アーティファクトによる戦いに私たちが直接巻き込まれるということはありえませんでしたが、双方の軍部で実施された都市そのものを壊滅させる戦法によって多くの市民が犠牲になったことが、今回の試算に現れているようです』

『なるほど……今日締結された条約によって、今後はアーティファクトの軍部使用がかなり規制されるみたいですね。国によっては――』


「おいっ! アスピトロ第一部隊は全員揃ってるか?」

「……みんないると思うけど?」

「さっき、上層部から通達が来た……大変な事になった」

「? もったいぶってねーで、さっさと教えろやい」

「――アーティファクトの、廃棄命令が出ている」

「え……?」


「アーティファクトの……総廃棄命令が出ている。――アスピトロ国内のアーティファクトを、一体残らず汚染区域に捨てるよう、大公様が指示を出した、と……」


 ――……

「は?」


<備考>

 《テキストを入力》



 2020/12/31 <log>


『“首都”公営放送ラジオのお時間です。本日は戦後復興に関してのニュースを、専門家の意見を交えてお伝えしてまいります』

『よろしくお願いします』


「……アキラ、大丈夫か?」

「お前こそ、平気なのか」

「オレは、まあ。ってか、妹は見つかったのかよ」

「――いや。見ての通りだ」


『汚染区域のいくつかで、廃棄されたアーティファクトの目撃情報が上がっています』

『今や“首都”の中でアーティファクトの姿が見られることはなくなりました。終戦後、すぐに総廃棄命令があったのはもちろんなんですが、反アーティファクトの機運が高まったために――』


「なんかさみーな、ここ。いい加減探す区域(エリア)を変えたほうがいいな。オレも隊長の行方が知りたい」


『アーティファクトを完全に破壊すべきとの意見も多かったのですが……まあ、倫理的な問題もありましたからね』


「シオンは……このあたりにいるはずなんだ。廃棄エリアがまさにここだった。もう少しだけ」

「まあ、お前がそういうなら」

「それに……」

「?」


「イツキも見つかってない。まだ、探せるところはたくさんある」


「……」

「……なんだよ」

「いや。どうして、あの『死神』にこだわるのかと思って、な」

「どうしてって……“親友”だから」

「相変わらず、お前はお人好しだな。アキラ」

「ただ友達を探しているだけだ。悪いか」

「いいや。たださ、“兄弟”たちのことはシオン以外まるで探してやらないのに、その“親友”とやらのことはえらく一生懸命にさがすんだなぁ、と思って」

「……別に、“兄弟”たちのことはどうでもいい。どうせ、制作者(マスター)だってもう死んでいるんだ」

「たしか三年前だったな。でも、そんなこと言いながら気にしてるんだろ?」

「……」

「まあいいか。オレは隊長や他のみんなが見つかればそれでいい」

「俺が探しているのは、シオンやイツキだけじゃないぞ、別に。他の仲間だって探している。そこまでの冷血漢じゃないつもりだ」

「まあ、なんだかんだ言ってアキラは優しいからな」

「……どーとでも言えよ」

「ははっ。じゃあ、明日も朝からこの近辺を捜索してみようぜ。――パーツのひと欠片だけでもいいから、なにか残るものを探そう」

「――ああ。そうだな」



<備考>

 アスピトロのアーティファクトは、汚染区域にバラバラに棄てられた。こんなことならもういっそ、全員パーツも残らないほどめちゃくちゃに壊してほしかった。

 みんなどこにいるんだ? このエリアを探し終わったら、どこにいけばいいんだ?

 戦争はもう終わったのに……なんでこんなに不幸せなんだ?

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