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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Prequel<B>,『セピアの過去』
337/476

337,

 2019/3/21 <log>


「アキにい!」

「っ!?」


 《北方・南方境界線・B−203区域(エリア)


「シオン……? びっくりした、驚かさないでくれ」

「ご、ごめんなさい」

「いや、そこまで萎縮しなくてもいいけど」

「アキにいの姿が見えたから、嬉しくなっちゃって」

「……」

「アキにい?」

「なんで、お前はそう……」

「?」

「いや、なんでもない。お前もここの見張りに?」

「別に? 暇だったから来ただけ。アキにいの居場所を検索したら、ここだって出たから」

「……なんか、だんだん制作者(マスター)に似てきたな、お前」

「え、本当!? 嬉しい」

「褒めてねーよ。褒め言葉ではないからな」

「?」

「はあ……もういいや。危ないから下がっていろ」

「あ、あたしも戦えるもん。というか、なんでアキにいは一人で戦場に出てるのさ? そのほうが危ないよ」

「いつも一緒に来てるやつが、今日はたまたま休みなんだ。詰め所に行ったら、今日やつは一日非番だって言われてさ――先に言っておいてくれてもいいのにな、水くさい」

「……むう」

「なんでふくれてるんだよ」

「だって、その人とはいつも一緒に戦場に行くのに、あたしは連れて行ってもらえたことないから」

「それは、だって」

「あたしはアキにいのなのに」

「……」

「ズルい、その人ばっかり」

「……『大切にする』って、言っちまったから」

「へ?」

「マスターに、お前のことを大切にしてほしいって言われたから――俺はその通りにしているだけだ」

「……」

「いくら強くても俺のために造られたアーティファクトでも、危ないものは危ないんだよ。お前のこと怪我させちまったら、なんというか……負けな気がするから」

「負けって……あたしは、『Ⅰ型』のアーティファクトだよ? 危ないのは承知で、それでもアキにいについてきたんだよ?」

「わかってる。わかってるさ」

「じゃあ、もっとあたしを連れて戦場に出て」

「それもいいんだけどさ……あー」

「なに?」

「いや」

「ねえ、なんなのさ?」

「だって……こんなこと言ったら、お前ぜーったい怒るだろ」

「怒らないよ! アキにいの言葉に怒るわけないじゃんか。ねえ、あたしに何か不満があるの? それともなにか……とにかく、言ってくれなきゃわかんないよ」

「……」

「……」

「正直、イツキのほうが気心知れてるから、あいつと一緒のほうが戦いやすい、から」

「!?」

「もーほらー、怒ってんじゃん」

「おこっ……怒って、な……」

「いいよ、わかってる。酷いな俺は」

「そんなわけない! ただ、ちょっと……嫉妬? しただけ」

「……」

「確かに、あたしよりもその人のほうがきっと強いんだろうし、よりアキにいと一緒にいたんだろうし――勝ち目がないのはわかってるよ」

「シオン」

「で、でも。あたしはアキにいの戦闘のバックアップに最適に造られたアーティファクトだよ? だから……あたしは、アキにいと組んで戦えたら強いよ?」

「……」

「ほら、あたし遠距離武器だよ? アキにいの手の届かないとこまで敵を攻撃できるし……それにほら、ね? あたし……えっと、役に立つよ!?」

「ふっ……あははっ」

「笑わないでっ! まじめなの、あたし本当に、」

「くっ……はは、わかってる。お前は……」

「?」


「お前は、俺の“妹”だもんな」


「……!?」

「ああ、他の兄弟たち(やつら)には内緒な? バレるとまたうるさいから」

「……そー、だよ。あたしはアキにいの妹だもん」

「そうだな」

「アキにいだけ(・・)の、妹だもん」

「ああ」

「その、イツキとかいう人よりも! ずっと……ずーっと、アキにいのことが好きだもん!」

「それはそうだろうな。俺が一方的にイツキのこと友達扱いしてるだけだから」

「!? 違う! あたし妹だから! 友達より……なんかスゴイから……」

「あはははっ」

「ねえ笑わないで!」

「はいはい」


<備考>

 ヤキモチ焼いているのが可愛いだなんて……俺もマスターに似てきたのかもしれない。だったら本当に最悪だ。

 まさか“妹”と公言してしまう日が来るなんて、夢にも思っていなかった。――でも、案外悪くないかもしれない

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