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2011/5/23 <log> 2/2
――おい、冗談だろ?
「……“妹”? 俺の?」
――コレをプレゼントだっつったか? あの人は
「制作者は、また俺の“複製”を造ったのか」
――年々、頭も倫理観もぶっ壊れてくな、マジで……あーもう
「まあ、いいや……お前、名前は?」
――なんだ、この弱っちそうなアーティファクト。本体は……ああ機械長弓か。黒鉄製とか、マスターも珍しいことするな
「し……シオンという。あなたが、あたしの“オニイサン”だとマスターから聞いた」
「別に、兄じゃない」
「ふえ!? そ、そうなの? いやでもマスターはそう、言ってて……」
「っ……」
――なんだこいつ、リアクションがオーバーすぎるだろ。やりづれえ……
「マスターが、お前のことを俺の――プレゼントだーとかなんとか言ってたけど、どういう意味だ」
「?」
「知らねーの?」
「えっと……あの、マスターがあなたについていけって」
「は?」
「あえ……あの、軍本部に一緒に連れて行ってもらえって。だから、一緒に行く」
「……」
「……?」
「ちょっ、ちょっと待ってろ」
「あの――マスター!」
「ん? どうしたんだい、アキラ」
「どうしたもこうしたも無いです。なんですかあいつ」
「?」
「シオンとかいうアーティファクトっすよ! 流石に手違いですよねあんなの。あんたどんなプログラミングしたんですか? あいつに」
「ああ、会ったのかいあの子に。どう? 可愛い子だろう」
「いや知らねーし。つか、今すぐあいつどうにかしてください。俺についてくるとか言ってるんですけど」
「え? うん。そうだけど」
「――はあ?」
「だって君、どれだけ連れていきなさいって言っても“兄弟”たちを自分そばに置こうとしないでしょ? 私がなんのために君の“兄弟”を造り始めたのか、忘れてしまったの?」
「いや……そういうことじゃ、」
「あの子はね、黒鉄製装備の試験品として造った子なんだ。君と同じモデルを使ったんだけど、想像以上に出来が良くてね。このまま軍部に送り込んでも遜色なく使える。だから、君が連れていきなさい」
「……ふざけないでください」
「ふざけていないよ?」
「おかしいって言ってますよね!? なんで俺が、自分のクローンを連れ回さなきゃいけないんですか?」
「ねえアキラ……」
「なんで、あんたはいつもそうなんですか? 機械っつっても、俺たちアーティファクトには意思があるんですよ。それを量産して中途半端に慈しんで……機械だからなにしてもいいとでも思っているんですか?」
「っ!? 違う、そんなことは」
「いいえ、そうなんですよ。あんたはそういう人間です」
「……」
「あんたの家族ごっこに……ままごと遊びに付き合うのは、もううんざりです」
「……アキラ、」
「あのアーティファクトはここに置いていくんで。あれも他の奴らと同じだ」
「……」
「軍本部に戻ります。メンテナンスも、あっちでやってもらうんで――もう、呼び戻すのはやめてください」
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「ま、待って!」
「……」
「ねえ、あたしを連れて行ってよ」
「……お前はマスターのとこにいろ」
「え? だってマスターは、」
「お前は俺には必要ないって言ってんだよ。ついてくんな」
「……」
「……」
「いい加減にしろ、ついてくるなって言ったのが聞こえなかったのか?」
「――あたしは」
「あ? ぼそぼそ喋るんじゃねーよ、聞こえない」
「あたしは……あなたのために造られたアーティファクトなのに……」
「は?」
――それ、どういう
「シオン、兄さん! やっと見つけた……」
「――んだよもう。兄さんて呼ぶなってあれほど」
「マスターが……マスターが、倒れた」
「「!?」」
「ちょっと待て、どういう意味だよそれ」
「――マスター、ずっと体調が悪くて。兄さんには言わないでって、言われてたんだけど……でも無理だよ」
「……」
「兄さんっ」
「……あーもう、なんで」
――あの人はいつもこうなんだ
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