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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Prequel<B>,『セピアの過去』
322/476

322,

 2003/2/28 <log>


「あ、おつかれ〜アキラ」

「おつかれ。こっち座っていい?」

「おうよ。連邦(こっち)の詰め所には慣れたか?」

「未だに部屋からここまで直線で来れない。なにココ、迷路かなんかなの?」

「はははっ、それな。オレ、今朝三時間迷って来た」

「嘘だろ……」

「はは、サイコー」


「それで? B地区(エリア)はどうなってる?」

「これから巡視だ。――ああ、ちょうどいいな。お前行ってくれないか、アキラ」

「え? ああ、了解っす。もう一人必要だな……おい」

「あ、オレはパス。別件がある」

「こっちもダメ」

「すみませ〜ん、別の仕事ありま〜す」

「……役立たず共め」

「外に出れば、暇なやつはわんさと転がってるからな。適当に連れてけ」

「了解。じゃあまあ、行ってくる」

「死ぬなよ〜」

「巡視程度じゃ死なないって」

「気をつけるに越したことは無いだろ?」

「へいへい――ご忠告どうも」


<><><>


「ちわー。ここ、アスピトロ派遣隊の三班の詰め所で合ってます?」

「お、二班の若造じゃねーか。なんつったかな……」

「アキラっす」

「おお、そうだ。やたら目立つ髪したガキだなぁと思ってたとこなんだ」

「ガキって……」

「新型機はみんなガキ――つーか、赤ん坊みたいなもんだろう。そいで? なんの用だ」

「今、イツキっています?」

「あ? 誰だそれ」

「……あいつ、おんなじ班の人にも名乗ってないのか。『死神』っすよ、“精霊の加護(プロテクション)”持ちの」

「ん? ああ! あいつのことか。あんなんにも、一応名前があったんだなぁ……あいつなら建物の裏手にいるぞ。あんまり詰め所の中には入ってこねーんだ」

「え? 外にいるんですか」

「なんせあの能力だろう? 不甲斐ないことに野郎どもが怖がっちまってよ。そしたらあいつ『俺は外にいるから気にするな』なんてぬかしやがった。なんだかなぁ」

「……」

「あいつに用事のあるやつなんて珍しいなぁ。なぁ、小僧」

「まあ……ちょっといろいろあって。ありがとうございます、おっさん」

「だーれが『おっさん』だ。あんまし生意気な口きいてると、そのニンジン頭丸刈りにしてやるからな」

「あ、マジですんませんでした」



 ――さて? どーこにいるんだ……

古の能力(エネミーサーチ)が欲しくなるな」

「……」

「……」

「あ、」

 ――見つけた

「おーい! イツキ」

「……」

「おお、暇そうだな。暇だろう? 暇だよな?」

「なんでお前がここにいる」

「詰め所にいたおっさ……でっかいアーティファクトがお前がここにいるって言ってたから」

「――なんの用だ」

「B地区の巡視につきあってくんない? 人手が足りないんだ」

「俺じゃなくてもいいだろう。なんでわざわざ……」

「はいはい、文句言わないの〜。ほら、行くぞ」

「……」

「あ、もしかして他に仕事があった?」

「いや。ただ、お前がわざわざ俺のところに来た意図がよくわからない」

「?」

「何が目的だ? どうして“精霊の加護(プロテクション)”のリスクがあるのに俺に構う」

「目的……は特に無い。意図って言われても――真っ先に思い浮かんだのがイツキだったってことしか無いけど? マジで」

「……馬鹿、なんだな。お前は」

「いや、ひどいな。……てか、さっきから加護のリスクが云々とか言ってるけどさぁ。そもそも俺から話しかけてるんだから、万が一イツキの加護で俺が死んでもそれは俺の責任だし、そうならないように気をつけるのも俺なんだから――イツキは、別に気にしなくていいんだって」

「……」

「第一、イツキも過敏すぎるけど周りの奴らも怖がり過ぎなんだよ。ちょっと距離を取るとか、そのくらい自分たちで気をつけろって話なんだよな――イツキは悪くないんだからさ」

「……」

「つか時間ヤバいな。さっさと行って報告しないと班長に怒られる……ほら、行くぞイツキ」

「……具体的に、B地区のどこだ」

「西側。ほら、国境沿いの」

「わかった」

「おお、乗り気!? じゃあ行こうぜ」

「……乗り気ではない、仕事だからだ」

「もーなんでもいいって。さっさと行って、飯でも食いに行こう!」

「……好きにしろ」


<備考>

 出発したのが遅かったからどうなるかとヒヤヒヤしたが――イツキがいたおかげで定時点呼に間に合った。

 イツキは気がついたらいなくなっていた、気まぐれなやつだ。今度こそ飯に誘おうと心に決めた。

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