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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter3,『正義の基準』
30/476

30,

 ――対アーティファクト戦線において、初めて『再構築製造機リサイクラー』が確認された戦いからニ週間弱。

 特にこれと言った変化もなく、“首都”は今日も平和の中にあった。



 ――カチャリ、



「ほら、終わった。どうですか調子は」


『イジョウナシ、イジョウナシ!』


 デスクの上でルクスの羽が光る。天音は手に持っていたピンセットを置いて、大きく伸びをした。


「んん〜っ!……まったく。民家の屋根に引っかかるとは――あれほど、低空飛行はしないようにと念を押しているのに」


 軽やかな金属音を立てながら窓枠に飛び乗るルクスに、天音はため息をつく。



 ――三十分ほど前に、ローリエが血相を変えて工房に飛び込んできた。原因は、民家の屋根に羽を擦って飛べなくなったルクスが、《ひととき亭》の庭に落ちていたことだった。


「ローリエさんにも迷惑をかけてしまいました……。ちゃんと、後で謝っておくこと」


『ワカッテルッ!』


 天音に頭を小突かれて、ルクスは首をかしげた後にひらりと窓から飛び立つ。


「……動作に問題はなし」


 飛び立つその後ろ姿を眺めて、天音はひとまず安堵の息を吐く。

 小さくなるその羽の一部が、不自然に光った。


「もう部品が無いんだから……これ以上、怪我しないでほしいんだけど」


 傷ついた羽は真鍮でできた少し特殊なものだった。しかしもう、現在の技術では作ることの出来ないものだ。

 代わりにアルミニウム合金製のパーツを自作したが――やはり、少し不自然になってしまう。


「替えなんて、きかない」


 アーティファクトはみんな一点物だ。それぞれの補修には、本来はそれぞれにあったパーツが必要だ。

 人間と違って、彼らは壊れさえしなければいくらでも生きることができるが……その感情や個性は人間と変わらないくらい特別性のあるものだ。


 ――もっと、


「私に技術力があればなぁ……」


 既存のパーツでツギハギにすることしか出来ない、私はやっぱり未熟者だ。

 そう、


義父とうさんなら――もっと上手くやるんだろうな」


 思わず口からこぼれ出た言葉に、天音はまたため息をつく。


「はあ――。そんなこと言ってる暇があったら、できることをしろ」


 天音は、自分に言い聞かせるようにボソリと呟くと窓から離れる。

 モスグリーンのカーテンが風に揺れた。



<><><>



 まだ昼間だと言うのに、ボーダーの内側の階段は機械ランプがわずかに灯るだけの薄暗い場所だった。階段それを下りた先の広間も同様に暗かったが――外に通じている出入り口のみが、ぽっかりとアーチを描いて明るく輝いている。

 そこには、絵か何かのように修練場の様子が切り取られていた。


 ――珍しい……


 この時間帯は見回りや作業などで出払っている“兵器”が多いのだが……今日の修練場は、いつもに増して騒々しい。

 ガヤガヤとざわめく外を、天音は広間の中から覗き込む。



 明るい陽の光の下で、“兵器”たちが円を描くように何かを取り囲んで、ガヤガヤと野次を飛ばしている。彼らの視線の先には――



『ガンッ!』



 ――あ……


 細身の長剣を“本体”として持つ『Ⅰ型』の“兵器”の少年と……あのタリスマンの青年――イツキがいた。

ローレンの分の人物紹介を忘れていました……



ローレンス (製造は第二次機械戦争中)


種族:アーティファクト(Ⅰ型)


ライフル銃の“本体”を持つ、南方軍出身のアーティファクト。とはいっても後方特化型で、どちらかと言うと頭を使って戦略を立てるのを得意とし、“兵器”たちからは“参謀殿”と呼ばれている。

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