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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
24/476

24,

 ――気がつけば、すぐそこまで軍勢が近づいてきていた。


「お前、武器エモノは何を使っている?」


 軍勢を眺めて、イツキがアザレアに問いかける。


「……飛び道具ですわ。でも、近接でも問題はありません」


「それでいい」


 イツキはちらりと横目でアザレアを見る。


「少し下がって援護を頼む。……できれば、アキラが戻ってくるまで待て」


「……え!?でもっ、」


 しかし、アザレアが言い終える前に、イツキは軍勢に向かって歩いていってしまう。


「ちょっと、イツキっ!」


 アザレアの叫びを無視して、イツキは、マントのフードを払う。黒い髪が、強い春の風に靡いた。


「……」


 イツキは一言も発さないまま、軍勢の目の前に歩み寄っていき……手にはめている、黒い革手袋を外した。



「……可哀想に、な」



 彼は、誰にいうとなくそんなことを呟いた。

 アーティファクトたちは、そんなイツキに勢いよく突っ込んでくる。


「イツキっ!」


 アザレアの鋭い叫び声が響くと同時に、


『タンッ!』


 イツキは軽やかに走り始めた。




 ――彼のやることは、実にシンプルだ。


「「うおおおおおっ!!」」


 雄叫びをあげながら突っ込んでくるアーティファクトたちの攻撃を躱しては、


「……」


 無言で彼らの体に触れていく。


 たったそれだけのこと、なのだが、



『っ!』



 触れられたアーティファクトたちは、声を発することも出来ないままに、灰になって消えていく。

 イツキはそのまま、軍勢の奥に向かって一直線で進んでいく。



「!……そうか、そうですわ」


 彼の動きを見て、アザレアはやっと、イツキのやりたいことを理解した。

 そんな彼女の後ろから、


「アザレアっ!」


「……アキラ」


 アキラと、彼に引き連れられたゲンジたちがやってきた。


「どうなってる……って、イツキっ!?」


 アキラは、たった一人でアーティファクトの大群に突っ込んでいくイツキを見て叫ぶ。


「あいっつ、なんて無茶をっ!」


「待ってアキラ!」


 急いでイツキを追いかけようとするアキラを、アザレアが制止する。


「あれはイツキの“作戦”なのですわ、」


 彼女は、イツキが向かっている方向を指差す。


「あれは……『リサイクラー』……!?」


 アキラの言葉に、アザレアがうなずく。


「どういうことだ?お嬢……」


 ゲンジがアザレアを見る。彼女は振り返って言った。


「あれはアーティファクトを作る装置なんですの」


「なっ!?」


 目を丸くするゲンジと周りのアーティファクトたちに、アザレアは更に説明する。


「あれがある限り、敵方(あちら)は際限なく人員を()()()()ことが出来る……。だからイツキは、あれを一番に潰すつもりなのですわ」


 アザレアの言葉に、ゲンジは一瞬惚けるが――すぐに顔をあげると、『遺物境界線レリックボーダー』の方を振り返る。


「だとよ、ローレン(参謀殿)!どうするっ」


『了解しました』


 ゲンジの問いに返ってきたローレンスの答えは、この場にいる全員の頭の中に響き渡った。

 ローレンス本人は、戦場を俯瞰することが出来るボーダーの上の見張り台にいる。


「さっすが……無線機能搭載の最新機種だな」


 アキラが呟く。ローレンスの言葉は更に続いた。


『先行部隊、アキラとアザレアはイツキの援護をしながら前に。残りはゲンジの指示で二手に分かれて、両側から軍勢を包み込む形で攻めます。……一匹も、『遺物境界線レリックボーダー』を越えさせてはいけませんっ!』



「よっしゃ、任せろ!」


 ローレンスの指示に、アキラは二カッと笑い、腰に吊るした自分の“本体”を抜く。

 オレンジ色の刀身が、陽の光に明るく輝いた。


「アキラは前に。ワタクシは後方からの援護ですわ」


 アザレアもそう呟くと、両手を前に出して広げる。その途端、彼女の両手を紫色の光が包み込んで――



 現れたのは、ニ丁の古式銃だった。

 ぐっとそれを握って、アザレアは不敵に笑う。



「行くぞっ」


 アキラの一言で、ニ人は走り出した。

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