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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
23/476

23,

緊急事態エマージェンシー緊急事態エマージェンシー……』


「きゃっ?!」


 仕事が一段落したのか、アザレアと談笑していたローリエが、怯えたように耳をふさぐ。

 警報音のようなそれは、頭の中に直接響き渡る不快なものだった。



「っ!襲撃だっ」


 アキラの言葉に、イツキたち三人は食堂を飛び出す。

 周りには、同じように警報を聞いて出てきた“兵器”たちが少なからずいた。



「どこだ……どこに出やがった!?」


遺物境界線レリックボーダー』に沿って猛スピードで走りながら、アキラが呟く。

 繰り返される警報は、『緊急事態』の一言ばかりだ。



「……この先だな」


 不意にイツキが呟く。


「え?何故わかるんですの?」


 アザレアが驚いたように横目でイツキを見る。


「……アーティファクトの生体反応。数は百前後。場所はここから南東に五百メートル」


「“索敵エネミーサーチ”かぁ……。ったく、そんなものまで標準装備なのかよ。便利だなぁ“旧型機”っ!」


 アキラが呻く。

 そのまま、彼はイツキを見た。


「俺はローレンスと将軍にこの情報を伝えに行く」


「分かった。さっさと戻ってこいよ」


 イツキからの応答にアキラはうなずくと、ひとり進路を変更してひらりと去っていく。


「こっちだ」


 イツキは目の前にある通用口から、『遺物境界線レリックボーダー』の外側に出る。アザレアが後に続いた。



 遺物境界線レリックボーダーの外側は、人の住むことの出来ない荒れ果てた土地だ。

 そんなボーダーの外には、惨状が広がっていた。


「これはまた……随分と集まりましたわね」


 アザレアが目を眇める。

 目の前には、イツキたちと同じように人間の姿をしたアーティファクトたちが群がっていた。


「最近、ずっとこうですわ」


「……こうって?」


 イツキはアーティファクトの軍勢から目を離さずに、アザレアに問う。


「数が異常なんですわ。ワタクシたちですら五十名弱ほどしか人員がいませんのに……」


「……多分、()()のせいだろうな」


 イツキが呟き、ある一点を指さした。アザレアが目を凝らす。


 ――それは巨大な箱のようなものだった。真っ黒で、滑らかな石のようなもので作られている。何の取っ掛かりもないように見えたが……ただ一箇所、側面の真ん中あたりに穴が空いている。


「あれは……」


「かつて北方軍で使われていた、アーティファクトの一種だ」


 イツキはその箱をじっと睨みつける。


「『再構築製造機リサイクラー』と俺たちは呼んでいた……。壊れて使い物にならなくなったアーティファクトの体を使って、再びアーティファクトを作り出す機械だ」


 見ろ。とイツキが言う。アザレアが再び、その箱を見ると……



『ゴポッ……』



 奇妙な音を轟かせて、その箱が……側面の穴から、人の姿をした()()()を吐き出す。


「っ!あれ、まさか……」


 その()()()が、ゆらりと立ち上がり……こちらに向かって歩く軍勢に加わるのを見て、アザレアが息を呑む。


「あれは量産型の『Ⅰ型』アーティファクトを作るタイプだな。……ある程度の部品があれば、新しいアーティファクトを産み出すことが出来る」


「そんな……今まであんなモノ、ありませんでしたのにっ」


 アザレアの叫びが、虚しく荒野に響いた。

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