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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
17/476

17,

「あら」


 突然、ソファーの上にあげられていたアザレアの右足が、ふわりと光を放った。

 その光は、足の切断面を始点にゆっくりと伸びて――光が消えると、そこには右足が、元のようについていた。


「直りました?」


 天音がアザレアの本体を持って、ローテーブルの隣に戻ってくる。


「もちろん!ちゃんと動きますわ〜」


 アザレアは、本体を天音から受け取ると立ち上がって、右足を軸にくるっとターンして見せる。


「ありがとうなのですわ!……危うくアキラに担がれながら戦うことになるところでした」


「……待って、担ぐのは俺で決定なわけ?「ほ〜んと、助かりましたわ!」


 アキラの訴えを思いっきり無視して、アザレアはにっこりと微笑む。アキラは諦めたように手のひらで顔を覆った。



<><><>



「それで……」


 アザレアが足の動作確認をしながら、不意にイツキを振り返る。


「貴方はこれから、どうなさるおつもりですの?」


 彼女の問いに、イツキは肩をすくめる。


「どうするか考えるためにここを出ようとしたら……そこの馬鹿に扉をぶつけられた」


「いや……それはマジで、ごめんて」


 横目で睨みつけられて、アキラは苦笑する。


「それなら!」


 アザレアは、はしゃいだように目を輝かせる。


「ワタクシたちと一緒にいらっしゃるといいわ!」


 その言葉に、イツキはちらりと彼女を見上げる。アザレアはにっこり笑った。


「アキラのお友達なんでしょう?実は、ワタクシとアキラは同じ“部隊”に所属してますの」


「……“部隊”?」


「まあ、“大戦”のときみたいにかっちりしたもんじゃ無いけどな」


 首を傾げるイツキを、アキラは笑って見る。


「俺とアザレアは先行部隊……要は、一番に現場で交戦を始めるメンツってこと」


「今は……アザレアさんとアキラさん。後は“将軍”――ゲンジさんがやってるんでしたっけ」


 天音の言葉に、イツキは「あ」と呟く。


「ゲンジって、あれか?あのバカでかい両刃斧の……」


「そのとおりですわ」


 アザレアがコクリとうなずく。


「元は南方軍一の実力者だったのですけど……今は、みんなから“将軍”なんて呼ばれて、ここの元締めみたいなのをやってますわ」


 知ってますの?と目を瞬かせるアザレア。イツキは思い出すように目線を上に上げる。


「何回かやり合ったことがある、はず」


「……あの人とやり合って死んでないって……すごいですね」


 天音が呆れたように呟いた。


「いや〜。こいつ、すごかったんすよ?ちょっと殴れば、相手は綺麗サッパリ消滅するんで!」


「……なんでアキラ(お前)が得意そうなんだ」


 イツキが横目でアキラを見る。が、すぐに目線を戻して言った。


「役に立つかはわからないが……分かった、一緒に行く」


 その言葉にアキラが「よっしゃ!」とガッツポーズをする。


「そうと決まれば、早速行きましょう!」


 アザレアがいそいそと出口に向かって歩いていく。アキラもその後に続いた。

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