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「あら」
突然、ソファーの上にあげられていたアザレアの右足が、ふわりと光を放った。
その光は、足の切断面を始点にゆっくりと伸びて――光が消えると、そこには右足が、元のようについていた。
「直りました?」
天音がアザレアの本体を持って、ローテーブルの隣に戻ってくる。
「もちろん!ちゃんと動きますわ〜」
アザレアは、本体を天音から受け取ると立ち上がって、右足を軸にくるっとターンして見せる。
「ありがとうなのですわ!……危うくアキラに担がれながら戦うことになるところでした」
「……待って、担ぐのは俺で決定なわけ?「ほ〜んと、助かりましたわ!」
アキラの訴えを思いっきり無視して、アザレアはにっこりと微笑む。アキラは諦めたように手のひらで顔を覆った。
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「それで……」
アザレアが足の動作確認をしながら、不意にイツキを振り返る。
「貴方はこれから、どうなさるおつもりですの?」
彼女の問いに、イツキは肩をすくめる。
「どうするか考えるためにここを出ようとしたら……そこの馬鹿に扉をぶつけられた」
「いや……それはマジで、ごめんて」
横目で睨みつけられて、アキラは苦笑する。
「それなら!」
アザレアは、はしゃいだように目を輝かせる。
「ワタクシたちと一緒にいらっしゃるといいわ!」
その言葉に、イツキはちらりと彼女を見上げる。アザレアはにっこり笑った。
「アキラのお友達なんでしょう?実は、ワタクシとアキラは同じ“部隊”に所属してますの」
「……“部隊”?」
「まあ、“大戦”のときみたいにかっちりしたもんじゃ無いけどな」
首を傾げるイツキを、アキラは笑って見る。
「俺とアザレアは先行部隊……要は、一番に現場で交戦を始めるメンツってこと」
「今は……アザレアさんとアキラさん。後は“将軍”――ゲンジさんがやってるんでしたっけ」
天音の言葉に、イツキは「あ」と呟く。
「ゲンジって、あれか?あのバカでかい両刃斧の……」
「そのとおりですわ」
アザレアがコクリとうなずく。
「元は南方軍一の実力者だったのですけど……今は、みんなから“将軍”なんて呼ばれて、ここの元締めみたいなのをやってますわ」
知ってますの?と目を瞬かせるアザレア。イツキは思い出すように目線を上に上げる。
「何回かやり合ったことがある、はず」
「……あの人とやり合って死んでないって……すごいですね」
天音が呆れたように呟いた。
「いや〜。こいつ、すごかったんすよ?ちょっと殴れば、相手は綺麗サッパリ消滅するんで!」
「……なんでアキラが得意そうなんだ」
イツキが横目でアキラを見る。が、すぐに目線を戻して言った。
「役に立つかはわからないが……分かった、一緒に行く」
その言葉にアキラが「よっしゃ!」とガッツポーズをする。
「そうと決まれば、早速行きましょう!」
アザレアがいそいそと出口に向かって歩いていく。アキラもその後に続いた。




