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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter2,『100年の眠りの先』
15/476

15,

 小さな窓枠に切り取られた空が、藍色に染まってゆく。

 立ち上がってマントをつけるイツキを、天音は振り返る。


「どこか、お出かけですか?」


「……いや、出かけるっていうか、」


 イツキは肩をすくめてみせた。


「“兵器”として配備も何も、何の指示も来てないからな……。とりあえず、ベース内歩きまわってみる」


 手袋をはめる手元を見て、天音は納得したように言う。


「そうは言っても、終戦からはまだ百年くらいしか経ってないし……首都ここには現存する“兵器”の殆どが集まっていますから、知り合いくらい見つかるかもしれませんね」


 天音の言葉にうなずいて、イツキは入り口に近づく。


「それじゃあ……、」


 彼がドアノブに手をかけた、その瞬間、



「「先生!!急患〜!」」



 誰かが向かい側から、勢いよくドアを開けた。


『ガンッ!』


「いっ……」


 大きな音とともに、イツキがしゃがみ込む。突然開いたドアにぶつかったのは……言うまでもない。


「わあっ!すんませんっ」


 ドアを開けたのは、“兵器”の男だった。……オレンジ色の長い髪が、慌てたように揺れる。


「あー……痛い音ですね。――ベルを鳴らしてから入るようにと、あれほど言ったはずですが」


 内開きなんですから。と、イツキを気の毒そうに一瞥して、天音は入ってきた男を不機嫌に見つめる。


「ほんっと、すんません……。あの、大丈夫っすか――、て、え?」


 その人物は、焦りながらもしゃがみ込んだイツキを覗き込み……、その直後、目を丸くする。



「え……、い、イツキ?」



「その声……やっぱ、アキラか」


 イツキは顔をあげると、その男――アキラを横目で見上げる。

 アキラは驚きのあまり、口をパクパクと動かすだけで、声を発することが出来ないようだ。


「知り合いでしたか」


 立ち上がるイツキと、棒立ちになったアキラを見て、天音は尋ねる。


「……“大戦”当時、北方軍の同じ組織にいた。戦場でもよく、一緒に行動してたから……、」



「な……なんでお前、こんなとこにっ!?」


 ――と、ようやく動けるようになったアキラが、イツキに詰め寄る。


「急に、いなくなったと思ってたら……。お前、百年も何してたんだよっ!」


「……封印されてた(寝てた)


 冷静なイツキの言葉に、アキラは目を剥く。


「はあっ!?おまっ……俺めっちゃ心配してたんだぞ!」


 声を荒らげるアキラに対して、イツキの反応は薄い。そんな彼に、アキラは更に目を怒らせる。


「ったく!だいたいお前な――、」



「ちょっと!今そこで、何が起こってるんですの?」



 しかし、アキラが全てを言い終わる前に、開いたままのドアの向こうからもうひとりの声が聞こえた。

 ドアの陰から顔をのぞかせたのは、イツキやアキラとそう変わらない年齢に見える女だった。


 ――縦に巻かれた長い金髪に、アメシストのような紫の瞳。コルセットで締められた中世風のドレスを着たその様子は、“お嬢様”と呼ぶに相応しい様相だった。

アキラ (見た目はイツキと同い年。製造は第二次機械戦争中)


種族:アーティファクト(Ⅰ型)


大振りの長剣を本体に持つ“兵器”の青年。

気さくな性格で、イツキとは第二次機械戦争中共に北方軍で戦った戦友。現在は境界線基地ボーダー・ベースで先行部隊として戦っている。

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