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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter5,『機械長弓と記憶の欠片』
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148,

「つーか、今気づいたんだけど……お前、怪我してるよな?」


「怪我? ああ、これのこと?」


 シオンは右肩を見せる。剣が貫いた大きな穴に、アキラは顔をしかめた。


「いつものことだから平気だよ。布でも巻いて、落ちないようにしとけばいいって」


「いや、ちゃんと直して(・・・)もらえって。それで千切れでもしたら洒落になんないんだから」


 アキラはシオンを睨みつける。しかし、シオンはその言葉に首を傾げた。


「え……だって、直してもらいようがないじゃん」


 ダルグでは、アーティファクトの修理なんてできない。政府直轄の修繕師(リペアラー)だっているし、材料が無いわけでもないが……


「ダルグで一番の修繕師だって、こんな損傷は直せないよ? この前やっちゃったおなかの損傷も、見せたら匙を投げられちゃったし」


 訝しげに言うシオンに、アキラは驚いたように目を丸くしたあと、ため息をつく。


「そうか……先生がおかしいのか……」


「?」


 よくわからなそうな表情をするシオンに、アキラはどう説明したものかと悩む。

 ちょうどその時、


「……被害状況はこれで全部だな? そろそろ全員撤退しよう」


 ボーダーに空いたアーチ状の入り口の向こう側から声が聞こえた。覗き込んでみると、天井の高い大きな部屋になっていて、その中央に沢山の“兵器”たちが集まっている。


「お、いたいた」


 その中央、資料を睨んで他の人員に指示を出している、燕尾服を着た男を見て、アキラは中に入っていく。シオンも後に続いた。


「じゃあこの通りに。――やっと終われる」


「おつかれ〜、ローレン」


 ひらひらと手を振りながら近づいてくるアキラに、その男は顔を上げる。


「ん? ああ、アキラか。アザレアから連絡が来たぞ、お前宿直中に寝てたらしいな」


「げっ!? くっそー、アザレアめ……もう勘弁してって、アザレアにこってり絞られたからさぁ」


 情けない声を上げるアキラに、ローレンスは鼻を鳴らしてみせた。


「十分想像できる。アザレアのことだから、どうせ力技だったんだろう? ――いいよ、今回は僕からは何も言わない」


 よりによって、アザレアに見つかるとはな。と、むしろ同情するようにため息をつくローレンスに、アキラはヘラヘラと笑って手を合わせる。


「マジでありがとう! お前は神なのか!? ローレンーっ」


「はいはい。それで? なにか用だったんだろう」


 うっとうしそうに目を細めるローレンス。アキラはシオンを振り返った。


「……そちらの方は?」


「ダルグから“兵器”志望で来たアーティファクトで……一応、俺の“妹”」


「シオンという。ダルグの地区防衛をしていた」


 アキラとシオンは今までのことをかいつまんで説明する。ローレンスは最後まで聞いた後に、シオンを見た。


「なるほど。“兵器”は今、尋常じゃない人手不足なんだ。ダルグ地区防衛――それも第一管理区ともなれば、かなり優秀なんだな。もうひとり、ここの責任者がいるから確認してみるが、志願理由はどうであれ、僕は歓迎するよ」


 柔らかく笑って言うローレンスに、シオンはほっとしたように息をついた。


「ありがとう。精一杯頑張る」


 嬉しそうに表情をほころばせるシオンに、アキラは破顔する。


「俺の妹……かわいいだろ」


「おお。キモいな、シスコン。でろっでろだぞ、顔」


 表情を失ったローレンスは、辛辣な言葉をアキラにぶつける。


「ひっど! ローレン、お前……」


「事実だ。そんなことよりも、」


 ショックで言葉を失うアキラを無視して、ローレンスは再びシオンに向き直る。


「腕の怪我、早く直してもらったほうがいい。ここの修繕師の先生は腕がいいから、すぐに直してもらえる。――今なら部屋にいるか? 連絡してみる」


 そう言って、ローレンスは近くに置いてあった大きな無線機に手を伸ばした。

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