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機械仕掛けの英雄譚  作者: 十六夜 秋斗
Chapter5,『機械長弓と記憶の欠片』
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147,

「シオンっ!? は、え? ダルグってお前……今まで何してたんだよっ!」


 アキラはシオンに詰め寄ると、ガバっと両手で彼女の肩を掴む。シオンはその勢いに、若干顔をのけぞらせた。


「アキにいこそ……まさか“首都”にいるなんて」


「マジで――びっくりした〜」


 シオンの肩を掴んだまま、アキラは顔を伏せて息を吐き出す。アザレアが訝しげにふたりを見て、首を傾げた。


「ふたりは、知り合いなんですの?」


「えっと……シオンは俺の“妹”なんだ。つまり、製作者(マスター)が同じってこと」


「ああ。アキにいのほうが先に制作されたんだが、同じところで働いていたから」


 体を起こしたアキラとシオンの言葉に、アザレアは納得したようにうなずく。


「なるほど。それはまた、随分と偶然の再会ですわねぇ」


 ふたりを微笑ましげに眺めるアザレアは、胸元から細いチェーンを引っ張り出すと、鉄扉の脇の操作パネルに手を伸ばした。


「じゃあちょうどいいですわね。ここから先、お嬢さんはアキラに任せますわ、ワタクシも暇じゃないし。――新しく“兵器”として加入となると……」


「ローレンと将軍のところだな。――今なら、まだロビーに本部が立ってるか」


 アキラは顎に手を当てると、鉄扉が重々しい音を立てて開いた。


「てか、アザレアはどうするんだ?」


「言ったでしょう? 暇ではないと。ローレンスが忙しいからって、今回の襲撃の首都中枢塔への報告を頼まれてますわ。今から行ってきますの」


 そう言って、アザレアはちらりとシオンを見ると、優しく微笑んだ。


「アキラの妹って、本当は業務をほっぽりだしてでも尋問したいくらいには興味があるのだけど……積もる話もあるでしょうから、ふたりでお話しながら行くといいですわ」


「尋問て……やめろ、俺の妹をいじめんな!」


 シオンの前に立って、アキラはアザレアをジトッと睨む。アザレアはにやりと口角を上げて踵を返した。


「あらら〜。アキラがお兄ちゃんヅラしてますわぁ。――あとでイツキに話しちゃおーっと」


 ひらりとスカートを翻して、ハイヒールとはにわかに信じがたい速さで走り去っていく後ろ姿を、アキラは呆れた表情で眺めた。


「相変わらずたちが悪いなぁ、あいつ。――ああ、心配しなくても、悪いやつじゃないから」


 振り返って苦笑交じりに弁明するアキラを、シオンは笑って見つめた。


「わかってる。ここまで案内してくれたし……」


 そう言ってシオンが口を閉じてしまうと、ふたりの間に沈黙が流れた。――口を開いたものかどうか、久しぶりに再会した者特有の気まずさが立ち込める。


「――まあ、行くか」


 やがて、その気まずさを破るようにアキラが声を上げる。ふたりでボーダーの内側に入ると、アキラは鉄扉を閉めてシオンを振り返った。


「ようこそ“首都”へ……っていうか、おかえりアスピトロへ? まあどっちでもいいや。とりあえず、こっち」


 アキラはそう言うと、壁伝いに歩き始める。シオンもその後に続いて歩きながら、きょろきょろとあたりを見回した。


「すごい――この辺にいるのって、みんなアーティファクト?」


「そうそう。さっきの襲撃があったから、みんな出てきてるんだよね」


 いくら数が少ないとは言え、ダルグに比べればマンパワーにかなりの差がある。すれ違う“兵器”たちは、みんなそれぞれの役職があるのか忙しない。

 アキラは歩きながら、ちらりとシオンを見た。

シオン(制作は第二次機械戦争中)


種族:アーティファクト(Ⅰ型)


機械長弓コンパウンドボウを“本体”に持つ、北方軍出身のアーティファクト。アキラと同じ製作者マスターに造られたアキラの“妹”。とある理由から“兵器”になることを志願し、ダルグから“首都”にやってきた。

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