おまけ:伯爵夫人は心配なので。【告知あり】
「ねぇ〜ボンボリーノぉ〜?」
「ん〜? どうしたんだいハニー!」
アレリラ達が、ペフェリティ領を訪れる少し前のこと。
就寝前に、アーハが声を掛けて来たので、ボンボリーノは笑顔で答えた。
「エティッチちゃんのことなんだけどぉ〜」
ぽん、と跳んできたアーハを受け止めつつ、ベッドに押し倒されたボンボリーノは首を傾げる。
「ロンダリィズ伯爵のとこの〜?」
「そぉなのよぉ〜! この間会った時にぃ、ウルムン子爵とお見合いしてぇ、今文通してるって恋する乙女の顔をしてたのよぉ〜!」
何故かボンボリーノに馬乗りになったまま、アーハは「きゃー!」と楽しそうに顔を両手で覆う。
ーーーハニーは今日も可愛いなぁ!
そんな風に思いながら、うんうんと話を先に促すと、彼女はコロッと困った顔に変わる。
コロコロと表情が変わるのも可愛い。
「でもぉ〜、お相手はウルムン子爵でしょぉ〜? 大丈夫かしらぁ〜?」
「大丈夫なんじゃな〜い?」
アハハ、とボンボリーノは軽く答えた。
「だって、ロンダリィズ伯爵や夫人が許したんでしょー?」
「それはそうなんだけどぉ〜。あの人、仕事は出来るけどコミュ障だしぃ〜。ボンボリーノが嫌いだしぃ〜。心配なのよぉ〜!」
「え〜?」
ーーーそっかー、ウルムン子爵ってコミュ障なのか〜。
コミュ障が何なのか分からないが、アーハが言うならそうなんだろうから、ボンボリーノは頷いた。
けど、何でボンボリーノのことが関係あるのかが分からなかったので、そのまま聞いた。
「何でオレが嫌いだとダメなの〜?」
「だってぇ〜、アナタが嫌いな人って不幸になるじゃないのぉ〜!」
「そうだったっけ〜?」
ぷくぅ、と膨れたアーハが、大きな胸を押し付けて顔を寄せてくるので、何となく頭を撫でておく。
ボンボリーノは、イヤなことは考えないし忘れちゃうから、関わらない人のことを、あんまり気にしたことがない。
けど。
「オレ、ウルムン子爵は苦手だけど嫌いじゃないよ〜?」
「え〜? そうなのぉ〜?」
「うん。何であの仕事してるのかは分かんないし、キレるとこも分かんないけど、別に嫌いじゃないかな〜?」
理由は自分でもよく分からない。
基本的に何となくとノリで生きてるので、言葉で説明しろって言われても出来ないけど、苦手なだけで、嫌いじゃない気がした。
ボンボリーノ的に、ウルムン子爵は『一人で好きなことしてる』のが性に合ってるタイプなのに、何でか人と関わろうとして失敗してる人、みたいなイメージである。
実際、なんか薬草を栽培する関係のことで凄い、みたいな話を聞いた気もするし。
「だから大丈夫じゃない〜?」
「そうねぇ〜、ボンボリーノがそう言うなら大丈夫かしらねぇ〜!」
何でか、アーハが安心した顔をしたので、ボンボリーノもますます口元が緩む。
「ウルムン子爵ってさー、昔から結婚したそうだけど、何で何だろうねぇ〜?」
話が終わったっぽいので、ボンボリーノは気になったことを、またそのまま口にした。
ついでに、今覚えた言葉を使ってみた。
「ウルムン子爵って、コミュ障なのに結婚もしたそうだし、人と話したそうだよねぇ〜。何でなのかなぁ」
すると今度は、アーハが目をパチクリさせる。
「そんなの、人と話すのが好きだからじゃないのぉ〜?」
「え〜。人と話すの苦手そうなのに〜?」
「好きか嫌いかと、得意か苦手かは関係ないんじゃない〜? ボンボリーノだって、下手くそだけどビリヤードとか乗馬とか好きじゃないのぉ〜」
「確かに!」
言われてみれば、好きと苦手は関係ないかも知れなかった。
「ハニーは賢いなぁ!」
「ボンボリーノがおバカなだけでしょぉ〜!」
そんな風に、いつも通りにアハハ、と笑い合って。
そのまま、ボンボリーノはアーハとイチャイチャした。
いつも通りで、とても幸せな気分だった。




