【おまけ⑥】伯爵夫人は幸せなので。
本編が一息つくと書きたくなる、それがボンボリーノ夫妻。アーハ視点です。
「あっはっは、それはないよハニー!」
今日もいつものように、ボンボリーノがケラケラ笑う。
「オレら、小賢しく考えるだけムダだから栄養は胸に回して育てたらいいよぉー! 触ってて気持ちいいしー!」
だからアーハも、大きく笑って言葉を返す。
「ボンボリーノは、栄養回すところないから余計太るのよぉ〜! あなたもこのお腹、ぷにぷにしてて気持ち良いわよぉ〜!」
「間違いない!」
今日も幸せだなぁ、って思いながら、アーハはボンボリーノがダメって言った業務提携の提案を、『おことわり』の箱にポイっと投げた。
後は、領地を任せ始めた従兄弟のオッポーくんの弟、キッポーくんが家令として処理をしておいてくれるはずだ。
「良い話なのでは?」
キッポーくんは、ボンボリーノのお父さん、先代ぺフェルティ伯爵に似て真面目な人。
でも、お義父さんほど頑固じゃない。
「いいのよぉ〜。ボンボリーノがダメって言うんだからぁ〜。きっといい話でもワタシたちがやっちゃダメなのよぉ〜!」
ニコニコとアーハが言うと、キッポーくんはメガネをクイッてして、ボンボリーノをチラッと見てから頷いた。
「分かりました」
ボンボリーノは、会った時からすごくおバカだった。
バカにされてもヘラヘラしてるし、全然頭のいいことなんか言わないし、アーハと違ってすぐにお金使っちゃうし。
でも、すごく人気があったし、周りの人たちもいい人ばっかりだった。
だから、なんで婚約者がいるのに口説かれたのか分からなかった。
『オレ、自分と同じくらいバカな子と結婚したいんだー! オレのハニーになってくれない〜?』
そう言われた時、全然意味が分からなかった。
だってボンボリーノの婚約者は、あの皆が憧れる完璧淑女、アレリラ様だったから。
アーハも、結構バカにされる方だった。
礼儀知らずってヒソヒソされたりもしてた。
ワタシってダメなのかなぁ〜? ってちょっとだけ思ってた。
でも、楽しいことは好きだったアーハは、あんまり深く考えなかった。
口説かれても『ダメ〜』って言うだけで、ボンボリーノに誘われたらホイホイついて行った。
皆で遊びに行くし、勉強も皆で『わかんな〜い』って言いながらしたし、ウルサイ人たちがいないところでは大きな声で笑ってた。
すごく幸せで、そうこうする内に気づいた。
ボンボリーノを本気でバカにしてる人は、その後グループから誘われなくなってた。
バカなことは言ってるけど、ボンボリーノが『やめといた方がいいよー』って言うことをやったら、その人後でいつも失敗してた。
お金を使う先は、自分のためじゃなくて、大体困ってる人の手助けだったり、親しい人への贈り物だったり、皆で出かけた先でのオゴりだったりした。
『ボンボリーノぉ〜。あなた、またバカなこと言ってるよぉ〜!』
『えー? そぉ〜?』
そう言って向けてくれる笑みが、いつの間にかすごく好きになっちゃったから、訊いた。
『なんでアレリラ様はイヤなのぉ〜?』
『ムカつくけど、イヤじゃないよー?』
『じゃ、なんで別れたいのぉ〜?』
『なんかアレリラ、幸せになれなそーじゃん? オレなんかと付き合ってると〜。オレもなれなさそ〜だしさー』
『じゃ、なんでワタシと付き合いたいのぉ〜?』
『それはアーハが好きだから!』
だから、協力した。
お義父さんが別れさせてくれないから、浮気で破談にしたいんだーって話も、前に聞いてたから。
でも、ボンボリーノはアーハしか口説こうとしなくて。
だから、協力しないとな〜って、なんとなく思った。
皆、やめといた方が、とか、ボンボリーノでいいの? って言ってたけど。
良かったんだと思う。
ボンボリーノは、すごくバカだけど、なんだか間違えない人だったから。
自分でどうにかする方法を考えさせると、アレリラ様の時みたいに騒ぎになっちゃうから、それは人にやらせるようにしないといけないな〜って思った。
きっとボンボリーノに皆が振り回されるのは、そういうのがわかってて、皆が手助けしてるからなんだろうなって感じだった。
でも、良かったと思う。
あの時、アーハもお父様にすごく怒られたし、今も、真面目で頑固なお義父様はアーハを嫌いみたいだけど、お義母様は『アレリラちゃんとは違うけど、あなたもあなたで可愛いわ〜』って言ってくれるし。
「お腹すいたねハニー」
「まだ始めて一時間も経ってないわよぉ〜。でも、午後からスイーツ買いに行きましょー!」
「いいねー! 屋敷の皆にも買ってきてあげよーか!」
「いや〜ん、良いわねぇ〜!」
「仕事してください」
キャイキャイしてると、キッポーくんに怒られたから、ボンボリーノと一緒に「は〜い」って返事をして、お仕事に戻る。
幸せだなぁ、って思う。
アレリラ様ともお友達になれたし。
ミッフィーユちゃんは可愛いし。
ボンボリーノは、今もおバカなこと言って隣で笑っててくれるし。
だから、アーハも笑うのだ。
ボンボリーノが言ってくれるから。
『ハニーはバカで良いんだよー! だってオレもバカだからー!』
だから、アーハも言うのだ。
『そうよねぇ〜。ボンボリーノ、ワタシよりもバカだもんねぇ〜!』
そんなわけで、アーハはボンボリーノが大好きだし、ずっと幸せっていうお話でした。
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