19.若干の諦めと共に
あの魔力判定式から約二年が経った。今は十歳である。
あれだけ式典で目立ったのだ、この二年間もすごく忙しかった……と言いたいところだが、実際は特別なことはほぼ何も無いに等しかった。
強いて言うならば、粗方の教育は終わったことだろうか。
妃教育も、始まってから二年。今ではもう何も教える事はない、と言われるほどにまでなった。
二年で終わる、というのは異例のスピードらしい。めちゃくちゃ褒められた。
当然、淑女教育も同じだ。もう完璧です、と言われた。
そのため、午前の時間が丸々空いてしまったのだ。何をしてもいいらしいが、正直言って暇だ。
(さて、どうしようかな。どうせなら前世では出来なかったけどやってみたかったことがしたいよね……)
何かあるかな、と考える。
魔法が使えるようになりたい、とは常々思っていたが、魔法は使えるようになっているし、楽器とかの音楽系にはあまり興味がない。
あれこれ考えているうちに、私は一つ思いついた。
そこで、直ぐにお父様に会うことにする。
「お父様に会いたいと伝えてくれるかしら?」
そう言うと傍にいたアンナがお父様にアポを取ってくれる。
お父様に時間があれば比較的早く会えるし、時間がなければ日時を指定される。会いたいからと言って会いに行く訳にも行かないのは貴族の面倒な所であることは間違いない。
暫くすると、アンナが戻ってきた。
「旦那様は今からでもお会いになれるそうです」
今は暇だったらしい。
公爵家当主が暇な訳がない。ウィリアムは娘大好きなので執務室にいる他の人に仕事を任せてでも直ぐに会おうとしていることをマーガレットが知る由もなかった。
「話とは、なんだい?」
お父様の部屋に入ると、直ぐにそう切り出された。
きっと、無駄話はできないんだろうな、と思い、前置きは全てカットして本題を単刀直入に言うことにした。
「わたくし、剣を習いたいです」
お父様に無駄な時間を取らせない私、優秀じゃない?と思いながらお父様の方を見たら見事にフリーズしていた。おかしいな。
「あのー、お父様?」
「あ、あぁ。どうしてその考えに至ったのか教えてくれるか?」
簡潔なだけじゃだめだったらしい。解せぬ。
「わたくし、妃教育も淑女教育も終えたでしょう?ですから、午前中の時間にすることがなくなってしまったのです。そこで、その時間に剣を習いたいと思いましたの」
どうだこれならいいだろう、とお父様の様子を見ると、やはり困惑の表情を浮かべている。何故だ。
首を傾げつつお父様を見つめていると、お父様が口を開いた。
「時間が出来たのは分かったが……。何故に剣なのだ?」
なるほど、そこか。
さてどうしよう、と考える。理由はあるにはあるが、流石にここでは言えない。
(だって、カリブ海を舞台にした某海賊映画の海賊たちに憧れたから、なんて言えるわけがないじゃん)
その海賊映画シリーズは私の前世でお気に入りだった映画である。剣で戦うシーンが多く、かっこよかったため、いつかあんな風になれたら、と思っていたのだ。
まさか転生先で叶えるなんてことは考えてもみなかったが。
「色々と理由はありますが……護身用、ですわ」
「護身用だとして、わざわざ剣にする意味は無いだろう?教えてもらっている間に怪我でもしたらどうする」
あー、なるほど。そこが問題ですか。流石に過保護だと思うんだけど。
どうやって許可をもらうか、と考える。
そこで、前に騎士たちの練習風景を見たことを思い出したので、それを利用することにする。
「わたくし、前に騎士たちの練習風景を見させていただきましたの。その時に、皆様とても素敵だと思いまして。わたくしもあのようになれたら、と感じたのです。勿論、同じようになれるとは思っておりませんが…。少しでも理想に近づきたいのですわ」
所々笑顔になったり伏し目がちにしたりして、全力で許可を取りにいく。
さてどうか、とお父様を見つめると、かなり悩んでいた。
(娘の希望は叶えたいけど危ないことはさせたくないっていう感じっぽいな)
「勿論、危ないことはしないと約束致しますわ」
最後のダメ押しである。
それを聞き、お父様は若干の諦めと共によかろう、と言ったのだった。
気がつけば前回の投稿から一年以上が経過してしまっていたのですね!??!
ここまで待ってくださった方、ありがとうございます……!! 新しく発見してくださった方もありがとうございます!!
次話の投稿もいつになるかわかりませんが待っていただければ嬉しいです




